「ぼっちゃん」:鬱屈と閉塞感
映画『ぼっちゃん』は、息苦しいというか、非常に観るのが辛い力作。秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにしたというよりは、あの事件にインスパイアされて自由に発想した作品となっています。
’70年代の日本映画の匂いが濃厚ですね。このどうしようもない鬱屈と閉塞感。今これだけ暗く八方塞がりな主人公の映画を観ると、かえって新鮮に感じます。
主演の水澤紳吾は「ブサイク、ブサイク」と自嘲する割には、さほどのブ男ではなく、むしろ大江千里に似てますよね。田中役の宇野祥平のおとなしい落伍者っぷりも、見事にハマッてます。 そして「イケメソ」犯罪者役の淵上泰史の「悪者」ぶりが、リアルにいやったらしくて凄いです。元スピードスケート選手だった彼の名が「黒岩」だってのが笑えますね。何せ大江戸の調査ではスピードスケート選手の6割は黒岩姓ですから(ウソ)。
中盤以降けっこう「ありえねー」と突っ込めるような不自然な展開が多く、これは笑うべきなのかしらん?と迷ったりもしてしまう映画です。狂ったコメディーとも呼べる代物です。 主人公をはじめとする登場人物たちがみな小学生レベルの行動や会話に終始するあたりも、やっぱり「狙い」なんでしょうね。
過剰だったり暴走だったりと、完成度は欠いていますけど、今の時代にぐいぐいと切り込んでいく意欲作には違いありません。「皆まで描かなかった」ラストには、どうしても物足りなさ感が残ってしまうんですけどね。
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