「ラストスタンド」:娯楽西部劇の現在形
アーノルド・シュワルツェネッガーが政治の世界から銀幕に主演復帰した映画『ラストスタンド』は、想像以上に面白かったです。でも興業的にはいかにも厳しかった様子で、まあ時代ですよね。派手なVFXを使った作品なら内容スカスカでも結構ヒットするし、こういう古典的テイストの上出来な娯楽作がコケちゃうんです。
監督が『グッド・バッド・ウィアード』や『悪魔を見た』のキム・ジウンだってことで、スピーディーで迫力たっぷりの剛速球演出です。現代の西部劇をちゃんと作ってくれました。もっとも生々しく血は吹き出すし、ちょとバイオレントな描写はあるしで、往年の西部劇とは当然違います。でも大江戸的には、『ジャンゴ 繋がれざる者』よりも断然こっちですねえ。
政治家業の疲れか、シュワがやけにジジイになってました。役柄のせいもあるのでしょうが、シワやたるみや眉毛の白髪などを隠さずに、“Old.(年だな)”と自嘲。 でもそれが本作の保安官に合っているのです。確かにスタローンの道を選ぶよりは、こっちの方がまともな選択だと思います。 悪役のギラギラした麻薬王(エドゥアルド・ノリエガ)もなかなかの迫力。この二人の最後の「対決」も、西部劇の伝統に則ったもので、今日び珍しい古典的味覚でした。いろいろご都合主義でも、辻褄が合わなくてもいいんです。西部劇だし。
街なかでのド派手な銃撃戦も凄い迫力でしたが、トウモロコシ畑をなぎ倒してのカーチェイスなんかも、見たことないような新機軸アクションで「おお!」と思いました。トウモロコシがフロントガラスにボコボコ当たったりしてね。
それにしてもフォレスト・ウィテカーが、有能そうに見えて実は妙に無能なFBI司令官を演じていましたけど、よくあんな役引き受けたなあ・・・。 昔の西部劇と違うのは、白人のみならず、アフリカ系、東洋系、ヒスパニックと人種が入り乱れていることですね。
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