「ビル・カニンガム&ニューヨーク」:この道一筋
映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』は、現在84歳(撮影時でも80歳は超えていたはず)になるニューヨーク在住のストリート・ファッション・フォトグラファーを追ったドキュメンタリー。半世紀以上にわたり、マンハッタンの街角で人々のファッションを撮り続けた「生きる伝説」の存在自体が圧倒的に凄くて、目を離せない面白さです。
自転車に乗ってマンハッタンを駆け巡り、素早い身のこなしで道往く人々のファッションをとりまくるこのおじいいちゃんの若々しいこと! いつも着ている青いスモック風ジャケットが、パリの日用品百貨店で買った「パリの清掃員の制服」だってのにビックリ。「安くて実用的でカメラが当たって擦り切れてもいいから」着ているという理由にもビックリ。でもこのブルーのキレイなこと。さすがはパリですね。 それとしばしば着ているコットンパンツのシルエットと丈の絶妙さ!実に素敵な着こなしなんです。自分のファッションには無頓着だとはいえ、やっぱり流石なんです。
それにしてもこのおじいちゃん、魅力的な人です。見ていて、愛さずにはいられないキャラクターです。終盤に職場の仲間が集まって、誕生日のサプライズでみんながビルのお面を着けて、青いジャケットでという場面があるのですが、いやー、愛されてますビル。ビルにまつわるあれこれの歌詞をつけた歌まで歌ってもらっちゃって・・・。
ビルは生涯独身なのですが、別にゲイではないらしく、「ファッション写真の仕事が面白くて忙しくて、女性と付き合うような時間はなかった」みたいなことをおっしゃってました。我々はこういう人を他にも知っていますよね。そう、「映画と結婚した」淀川長治さんです(もっとも淀川さんはゲイだったようですが)。生涯のすべてをかけて、好きな道一筋・・・そういう人はやはり面白いし素晴らしいですよね。
勲章をもらった時のパリでの授賞式では、流暢なフランス語を交えたスピーチ。うーん、ますますステキで幅の広い方です。 彼の言葉に「美を追い求める者は、必ずや美を見出す」というのがありました。その通りだと思います。逆もまた真で、美を見出そうとしない限り、どんな名作を見てもその輝きに気がつかないのだと思います。そういえば、淀川さんもどんなしょーも無い映画でも、その中に美を見出そうとしてましたよねえ。
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