「箱入り息子の恋」:純度の高い恋愛映画
映画『箱入り息子の恋』が予想以上に素晴らしく、夏帆ちゃんも久々にらしくって良くって、うん、嬉しい嬉しい。夏帆は妙なチャレンジしなくても、こういう路線でいいじゃないですか。やっぱり適材適所ってことですよ。
純正の「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語であり、『ロミオとジュリエット』にオマージュを捧げていることは明らか(バルコニーの場も用意されております)。そしてそういう古典的な骨格があるから、ディテールのくすぐりも生き、登場人物(特に主役二人)のキャラクターも浮かび上がってきます。
星野源演じる箱入り息子君の奮闘がいじらしく、夏帆のまっすぐなイノセンスが輝いて、この「恋のはじめの日々」がキラキラまぶしくてたまりません。大好きなんです、こういうの。本作は恋愛映画としての純度が高くって、手をつなぐことのときめきとかキスのドキドキ感とかが、丁寧に表現されていて、そういう積み重ねが上質な映画世界を形作っています。
吉野家が特別協賛とクレジットされていますが、2回出てくる吉野家での二人の場面が、そりゃもう素敵なんです。特に2度目の二人の位置関係と「泣きながら牛丼」は、映画史に記憶されるべき名場面です。
市井昌秀監督(脚本も)の演出は瑞々しくも安定した達者なものですが、二人が初めてホテルに行った時に何が起きたかだとか、吉野家で星野が突然席を移動したのはなぜかだとかが明確に描かれないだけに、いくつかの解釈が可能で(あるいはだいぶ後にならないとわからない)、そこらへんちょっとマイナス。あと、バルコニーの場で引っ張り上げるシーンは、ちゃんと柵を乗り越えるカットを撮らないとダメ。あそこ省略したらアマチュア映画なんです。更に言えば、星野の母親(森山良子)が事故の後で夏帆のことを非難するのも説得力がありませんでしたね。 でも、愛すべき映画には違いなく、奔放な同僚の女(穂のか)の存在が最後の方で効いてくるあたりも、映画を豊かにしています。
ラストが意外とだらしなくて、名作になり切れませんでした。ここでもうひとふんばりしてくれたらなあ、との思いが・・・残念です。でも笑えて、感動できて、気持ちのいい娯楽映画でした。
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