「フィギュアなあなた」:石井隆はまだまだこんなもんじゃない
都内では、いや関東では池袋のシネマロサ1館だけの公開となっている映画『フィギュアなあなた』が、巷で高評価です。銀座シネパトスが健在なら、間違いなくかけていた作品でしょう。
うーん、これを高評価にするってのは、「ひいきの引き倒し」っていうか、石井隆ホメ殺しになってしまうのではないでしょうか? ダメ男、天使のような女、闇、雨、暴力、血、ネオン、廃墟、光と影、絶望、希望・・・。石井隆映画を形作る要素はたっぷり含まれているのですが、どれも過去の石井作品に較べると密度が薄いというか、ぬるい感じがします。
巻頭の竹中直人がらみのシーンや、フィギュアの彼女が戦闘少女よろしくアクションする場面などは、「笑っていいのか?」「ギャグなのか?」って感じに石井映画離れしたトーンで、ちょっと困りました。
エロスとタナトスの苦いお伽噺で、観る者を酔わせてくれる石井隆にしては、設定自体があまりにもお伽噺すぎて、逆にファンタジーが機能しません。また、こんな無表情な役であってもやはり演技力の無さが明白で、発声する場面ではやはり相当苦しいんですよねー。
柄本佑のダメダメぶりも、いかにもロマンポルノの系譜ではありますが、相当鬱陶しい奴ですね。
ラスト近く、佐々木心音が純白のバレエ衣装で夜の闇を空中浮遊(ワイヤーワーク)する場面は、なかなか美しかったです。その後のお祭り騒ぎと共に、「フェリーニ的」だと言えるでしょう。 (以降ネタバレあり)そして魂の移動する主観シーンには、やはり『天使のはらわた 赤い眩暈』(石井の初監督作品)を思い出さずにはいられませんでした。
ああ、やはりもっと暗く、もっとやるせなく、もっと哀しい石井映画を観たいものです。
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