「華麗なるギャツビー」:豪華絢爛な眼福映像
映画『華麗なるギャツビー』は期待通り、いやそれ以上の素晴らしさ。3Dで観たのですが、その効果も映像の狂騒状態に拍車をかけるようで、いやー豪華絢爛なスペクタクルでした。
なにしろバズ・ラーマンのケレンを堪能するつもりで観たのですが、前半のパーティー・シークェンスなどには彼らしい映像の乱痴気騒ぎが観られはするものの、全体的にはむしろラーマンらしさを抑えた堂々たる作り。フィッツジェラルド原作に敬意を表しながら、クォリティの高い映画に仕上げました。大江戸としては’74年のロバート・レッドフォード&ミア・ファロー版(ジャック・クレイトン監督)よりもこちらを上位に置くことにためらいはありません。
メインタイトルで擬古体的モノクロから黒と金のアールデコに変わっていく凝りようと美しさ。とにかく映像・色彩のコントロールと、細部までの美術、衣装のゴージャス感、一流感のめくるめく奔流。時代再現のみならず、プラダやティファニー、ブルックスブラザーズの醸すファッションの絢爛と現代性。ヒップホップまで動員して表現するローリング20'sの狂騒と爛熟(ちなみに“Rolling”ではなく“Roaring”=うなりを上げる、とどろく ですよ)。そんな中に最終的には「祭りの後の寂しさ」や「諸行無常」の喪失感を滲ませていった本作はやはり見事な映画化と言えるでしょう。 パーティーで夜空に花火が上がって、音楽は『ラプソディ・イン・ブルー』のあのあたりを使うなんてのは、ウディ・アレン『マンハッタン』へのオマージュだったりするのでしょうか?
原作でも印象的だったプラザ・ホテルの一室における当時の真夏の再現=冷房が無いので、氷で涼を取る。しかしながらメンズの装いはタイドアップの3ピース・スーツ!真夏なのに、みんなベスト(“waistcoat”って言います)です。「クールビズ」なんて品位の無いものは、かけらもありませんね。ここでの男たちの顔にうっすら脂汗がにじんで上気してるあたりのリアルな描写も見事だなあ。
ギャツビーがデイジーとの思い出の数々を後生大切に完全保管しているあたりの意地らしさも、実に男のロマンティシズムですね。彼がデイジーとの再開で、少年のようにドギマギしてしまうあたりを、レオナルド・ディカプリオは意外なほど説得力たっぷりに演じます。最近のでっぷりと憎々しい悪人レオとは違って、バズ・ラーマンとの『ロミジュリ』のレオをちょっぴり引っ張り出してきたようで、健闘していました。胡散臭さも含めて、レッドフォードよりも「ギャツビーらしい」と言えるような気がします。 キャリー・マリガンもミア・ファローよりも可愛らしくて世間知らずで、デイジーっぽかったし、トム・ブキャナン役のジョエル・エドガートンは日本の配役なら絶対岸谷五朗だろうなあ。
「ロマンティシズムと喪失感」という原作のテーマがきちんと打ち出されていた点も、やるじゃないかバズ・ラーマンって感じでしたし、とにかく華麗なる映像が終始「眼福」なのでありました。
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