「野いちご」:人生がここにある
昨年の11月か12月に知って以来、ずーっと楽しみにしていたユーロスペースのベルイマン特集上映、しかもいちばんの代表作3本!20日から始まってますね(8/16まで)。まずは大江戸のライフタイム10にも入っている’57年の名作『野いちご』を観ました。
ウン十年ぶりの『野いちご』です。デジタル・リマスター版なので、クリアーでキズなどあろうはずもないのですが、キレイすぎてシャープすぎて調子狂っちゃうなあ、という贅沢な悩みも。何度も映画館で観たこの映画、だいたいの場面は覚えていますねえ、やはり。 日本語字幕も新しくなっていましたが、昔の方がユーモアがあったし、感動も深かったような気がするのは「ないものねだり」でしょうかねえ。
老人(著名な医師)の人生を夢と回想の中に振り返る本作ですが、こうしてみるとロード・ムービーだったんですね、コレ。道中出遭うさまざまな男女のからませ方が素晴らしいんです。そして、この旅を通して浮かび上がってくる老人の人生。苦い思い出と悔恨と不安。
夢の場面がいくつかありますが、やはり冒頭の「白日夢」が圧巻です。シュール・レアリスムやドイツ表現主義の映像化みたいに、ハイキーなモノクロ映像が只ならぬ感覚で迫ります。映画史に屹立する最高の悪夢表現でしょう。
(以下ややネタバレあり) そして全てが甘美な思い出(本当にあった思い出なのか、願望としての思い出もどきなのか・・・)に包まれていくラスト。これを成り立たせる、いやもっと言えば映画全体を成り立たせる「老人の顔のアップ」。そのシワ、その表情。そこに人生の全てを描き出したベルイマン。うーん、完璧です。
ちなみに、ユーロスペースで売っていた3作共通のプログラム(1,000円)には3作の「シナリオ採録」も載っていました。これまた昔っぽくて、よろしいですね。
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コメント
はじめまして、ブログ楽しく読ませて頂きました。
モノクロほんと綺麗ですね、デジタルだからですか?
ほんと見たくなりました^^
投稿: 坪江 | 2013年7月31日 (水) 16時29分
坪江さん、コメントどうも。ベルイマン好きのウディ・アレンは「影と霧」で本作の映像トーンからも影響を受けていると思います。
投稿: 大江戸時夫 | 2013年8月 1日 (木) 00時18分