「インポッシブル」:比類なき津波描写と、ヒューマニティー
映画『インポッシブル』は2004年スマトラ島大津波の時に実際あった家族の物語をベースにした作品。ナオミ・ワッツやユアン・マクレガーが出演している英語作品ですが、実はスペイン映画なんですね。びっくり。
それにしても津波シーンのリアルな迫力というか、リアルすぎるほどの描写の凄さ! VFXのレベルはハリウッド以上。とにかく津波の怖さをこれだけわからせてくれた映像ってのは、史上初でしょう。韓国映画『TSUNAMI』やイーストウッドの『ヒア・アフター』よりも圧倒的です。「なぜ津波がそんない怖くて、なぜそんなに死者が出るのか?」ってことは、実際のニュース映像を見ていてもわからないのですが、この映画で描かれているように、激流の中をガラスやら金属やら木やら、それも尖ったものやらギザギザのものやら角のあるものやらがいろんなスピードで流れたり止まったりしていて、そこを無防備な人体が抗い難い奔流の力で振り回されて行くのです。ぞっとします。
我々日本人としてはリアルに怖すぎる映像ですし、正視できない人も大勢いることでしょう。しかし、本作品は決して興味本位なスペクタクルとしてではなく、真摯な姿勢でこの映画を作っているとわかります。多くの人に観てほしい力作です。
木がなぎ倒され、沼のようになった被災地一帯の造形や描写も見事ですし、負傷し出血しながら歩く母親の辛そうな痛そうな描写も圧巻。彼女が病院に収容されて以降、傷と顔色の悪化でゾンビか悪魔つきのようになっていくあたりはもう「これはホラーか?!」と思うほどの凄絶さ。これだけ顔を汚したり、水と格闘したりしたんだから、オスカーはあんなチンピラ女優ではなくてナオミにあげたかったなあ。
中盤以降いろんな所でとにかく泣かせてくれますが、「これってちょっとないでしょ?」とか「ちょっと安直すぎない?」と思っても、「だって実話(がもと)なんだもーん」ってことで、最後まで感動して観られるって寸法。いやー、泣けました、泣きました。ベタかも知れないけれど、小生は許しちゃいます。特定の災害の話から、普遍的な家族愛や人間の生きる姿勢についての物語に敷衍していったからこそ、この作品の意味が深まり、質が高まりました。ダニエル坊やの使い方、うまかったなあ。
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