「処女の泉」:聖なる映画
先日の『野いちご』に次ぎ、ユーロスペースの「ベルイマン3大傑作選」で『処女の泉』を観ました。これまたウン十年ぶりですが、以前より素晴らしいと感じました。それにしてもモノクロ・スタンダードの画面って、懐かしいし、ほっとするし、格調がありますよね。
(以下ネタバレあり) シンプルな物語です。犯されて殺された娘の復讐を父親が遂げるという、ただそれだけの話。語り口も至ってシンプル。しかし、そこに映画の風格や聖性が立ち上っています。ごく稀に「聖なる映画」と呼びたくなる作品が存在しますが、本作こそはまさにそれです。
父親(マックス・フォン・シドーが若い!)が復讐の決心をし、シラカバを全力でなぎ倒し、斎戒沐浴する場面の聖なる迫力。枝で体を清める音、水をかぶる音御、静かな朝の空気の中の鳥の声、小屋の中で眠る悪人たちの寝息・・・と繊細な音響もただならぬ効果を上げています。もちろんスヴェン・ニクヴィストの撮影の見事さは、言うまでもありません。
そしてラストに一つの「奇蹟」がおきるわけですが、その泉の水が神を示すかのような、全てを浄化するかのような、素晴らしく映画的でいて、かつ非常に演劇的なエンディングを迎える時、小生は厳粛な感動を覚えました。やっぱりベルイマンにしか作れませんよね、こんな映画。作品自体が「奇蹟」のようで・・・。
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