「トゥ・ザ・ワンダー」:愛の日々の映像詩
映画『トゥ・ザ・ワンダー』は『ツリー・オブ・ライフ』に次ぐテレンス・マリック作品。今回は短いインターバルで完成したのですね。これまでのマリック作品で、小生としてはもう期待することはやめたもんで、そんなつもりで観たら、これが実に素晴らしかった(WONDER+full)のです。
詩です。映像詩です。観る者はこの映像と音楽と少量の囁くような台詞の流れに、ただただ身を任せて漂っていけばよいのです。そうすれば、このゆったりとした視覚的心地良さが包みこんでくれて、ただただ気持ちが良いのです。オルガ・キュリレンコが、慈愛と透明感にあふれ、ただただ美しいのです。ラヴリーです。
名手エマニュエル・ルベツキによる撮影は、多くがキャメラの移動を伴うショットであり、その流麗な動きが人物を追っていきます。自然の美しさ(マジックアワーの空とか)も、人口の美しさ(スーパーマーケットの棚とか)も等価に捉えるその視点と、文学的というよりむしろ科学的にビューティフルな映像は、例えば『コヤニスカッティ』あたりを思わせるものだったりします。
愛の過程を、愛の日々の流れを追ったポエティカルな映像のコラージュ。あたかもいまわの際に見た走馬灯的な映像に思えてなりません。愛の終わりに見た走馬灯だったのでしょうか。それでも、その「天国の日々」はキラキラと甘美に輝いていました。
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