山口果林の「安部公房とわたし」
女優・山口果林の著した『安部公房とわたし』(講談社)を読みました。何を隠そう(いや、隠していませんが)小生は安部公房の大ファンなのです。
二人は果林が18歳の頃、つまり彼女がNHK『繭子ひとり』でブレイクする何年も前に出会い、大作家と女子大生~女優として愛を育んでいった関係。彼女と公房、そして公房の妻・安部真知との波乱に満ちたスリリングでアーティスティックな日々の回想録です。
安部夫妻も亡くなり、彼女も66歳になった今だから公表することのできた、男と女の赤裸々なあれやこれやが、生々しく綴られています。
山口果林の文章は、正直シロウトすぎて、意味が正確に伝わりにくいし、推測しないとわからない部分も多いし、繰り返しの記述も多いし、とにかく自己主張が強くて、ムムム・・・な感じ。でも、その書きなぐった日記のような、猪突猛進的な文章から、二人の破天荒な日々が迫ります。
当然初めて知る事実ばかりで(ってゆーか、そもそも二人がつきあってたこと自体知らないし)、驚きながらも興味深く読み終えました。でも、この作品で一番救われたのは、当然果林さんなのでしょう。人生の総決算という感じです。彼女の稀有な体験を通して、人間って面倒くさくも面白くも変なもの、という思いにしばし捉われるような一冊でした。
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