「最愛の大地」:暴力を告発する力作
アンジェリーナ・ジョリー初監督作品『最愛の大地』は、1990年代前半のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を舞台にした力の入ったドラマ。この恐るべき暴力と人間の歪んだ邪悪さを差しだすアンジーのまなざしには、告発へ強い気持ちが感じられます。確かに一方的なきらいはあるのでしょうけれど、現代の戦争を通して描きたかったことは「真実の記録」ではなく、別のものなのでしょう。もっと普遍的な「人間の暴力性」や「不寛容の狂気」への告発。
まずリアルな市街戦の描写や、銃撃音の迫力に驚嘆します。人を殺す力が宿った恐ろしい音響が重く迫ります。映画の質って、結構こういう所で決まるのです。そもそもアヴァン・タイトルの爆発シーンの唐突でリアルな迫力ときたら、観てるこっちまで衝撃を受ける程のものでしたし。
ただ二人の関係あれこれについては、何かとツッコミ所満載です。「いくらフィクションでもそれはないでしょ」ってことが多く、描写もところどころ正確性を欠いたり、必要なカットが無かったりします。また肝腎かなめのラストに来て、急に演出の緊密度が落ちてしまいました。それにそこらへんの行動によって、「いったい何だったんだ、この男は?」となってしまうような、疑問符だらけの展開。最後に崩れちゃいましたねー。
でも全体的には力作であり、作ったことに意義がある映画であり、訴えたい思いの強さは支持してあげたい映画でもあるのです。まあ、ストイコヴィッチ(セルビア出身)もオシム(ボスニア・ヘルツェゴビナ出身)も大好きな小生としては、複雑でもあったりするのですが・・・。
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