「共喰い」:昭和的・荒井晴彦的
映画『共喰い』は、原作未読ながら、昭和の終わりという時代を舞台に、昭和らしい物語が展開されます。そして、それ以上に脚本の「荒井晴彦」らしさが全面的に出ている作品でした。
荒井晴彦といえば、日本映画の日本映画らしさを今も体現しているライターで、いわば「テレビ局主導映画の対極にある人」です。脚本を読んでいなくても、その行間から立ち上る映画らしさ、映画ならではの味、そして作りものではない本物の人間が感じられるホンなのだと思います。こういうホンを書く人って、いなくなりましたねえ。ま、天皇の戦争責任云々の部分(創作なのだとか)は、ちょっとやり過ぎだと思いますが・・・。

そして青山監督の演出がたっぷり昭和的で、このやるせない閉塞感みたいな空気がいくばくかの狂気をはらんでいる様子などは、まさに'70年代の日本映画チック。田中裕子の義手やゴム手袋の撮りなども、実にそうですね。久々に映画の中のああいう感覚を体験しました。「コク」のある描写とでも申しましょうか。まあ、そうは言っても青山真治監督なので、あっさりとしていると言いますか、まとわりつくような暗さや情念は希薄なんですよね、よくも悪くも。
田中裕子の凄さは今さら言うまでもないでしょう。光石研は、あと一歩のような気が・・・。 そして主人公の幼馴染役の木下美咲が、かなり良いです。しっかりした昭和っぽい存在感。弱さと強さ、イノセンスとしたたかさを同時に表現できる逸材だと感じました。
最後のいくつかのシーンは映画のオリジナル(原作にない創作部分)なのだそうですが、うーん、やっぱり荒井晴彦だなあって感じでした。女性のしたたかな強さをはじめとして。
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