「パッション」:デ・パルマらしさ復活も、やや薄味
あのデ・パルマ(今野雄二さん流に言えば「ディ・パーマ」)が帰って来た!とでも言いたくなるような、ケレン味たっぷりのエロティック・サスペンス。
話はまあステレオタイプのサスペンス。ヒッチコックの時代なら、主人公二人とも男性だったことでしょう。てなわけで、デ・パルマの原点帰りであると同時に、ヒッチコック映画の再来でもあるわけです。ヒッチコックらしさは、プロットやら刑事の配置やら金髪やららせん階段俯瞰やら随所に見られますが、映像のルックも闇の調子とか赤や青のトーンとかが、いかにもヒッチコックのカラーになっています。
そしてピノ・ドナッジオの音楽とか、劇中でのヴィデオ映像の使用とか、歩いて移動するノオミ・ラパスを移動しながら捉えるキャメラとか、「待ってました!」のスプリット・スクリーンとかのデ・パルマ印もたっぷり。やはり、あのデ・パルマが戻って来たのです。
とは言え、正直なところその(映画的)パワーは全盛期の7~8掛け程度でしょうか。同じ移動撮影やスプリットスクリーンでも、あのめくるめく陶酔感には至らない感じなのです。懐かしさはあるけれど、衝撃が足りない---まあ、それを73歳の監督に求めても酷なのかもしれませんが・・・。
(以下多少ネタバレあり) 凶行の場面の短いモンタージュや、ラスト近くの妖しい女の描写には、まだまだ捨て難いデ・パルマ風味がありました。そして夢オチまで! でも、その衝撃度はかなり低いものになっていたのでありました。
とっぴょうしもない例えですが、そのケレン味やエロティシズムや娯楽性や血へのこだわりや派手な色彩などにおいて、ブライアン・デ・パルマと五社英雄監督には共通点があるなあと思った大江戸でした。
それにしても何でこの作品のタイトルは『パッション』なんだろう? 情熱や受難とは縁遠い感じですけど・・・。それが最大のミステリー・・・か?
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