« 今日の点取占い206 | トップページ | おはなのど飴 »

2014年2月11日 (火)

「小さいおうち」:謎解きではなく・・・

346418_010_2

映画『小さいおうち』は山田洋次らしくもあり、らしくもなしという佳作。まあ客席に身を沈めて後はおまかせで良いという、まさに「映画で語る」名人の仕事には違いありません。

346418_003

赤い屋根の洋風モダン住宅が実に「かわいい」のですが、そのお伽話的外見と、その中での不倫事件に関わる人々のもやもやと複雑な心理が対置されています。

346418_002

そして謎を残した作りが、作品に深みを与えます。 (以下ネタバレあり) タキちゃんがおばあさんになった晩年の「深い哀しみ」の理由は・・・? そして作品冒頭でちらりと出てきた1枚の絵の存在を思い出した時、あっと驚き、ぞっとするわけです。ただ、そういうミステリーが主題の映画ではないので、山田監督もそこの「謎解き」は行いません。あくまでも奥ゆかしく、「置いて」あるだけですし、いろんな解釈が可能な作りをとっています。そこに人間というものの、単純ではない深さが見え隠れするのです。

346418_001
女中のタキを演じる黒木華が見事でした。彼女の柄(がら)にぴったりのハマリ役と言えるでしょう。 一方、近年圧倒的な演技(『ヴィヨンの妻』『告白』『夢売るふたり』)を見せる松たか子は、「まずまず」といったところ。ちょっと中谷美紀で見たい気がいたしました。 そして吉岡秀隆に関しては、ミスキャストなのでは? ここはもっとキリリとしたハンサム・ガイの方がフィットしたと思うのです。

346418_004

山田洋次らしくと申しましょうか、右傾化への警鐘をきちんと描いています。『母べえ』の時ほど強烈にではありませんが、第二次大戦に向かう昭和初期と今の時代の空気が妙に似ていることへの恐れを、市民レベルの描写の中から発信する骨のある姿勢は、いつもながら貴重なものだと思います。

|

« 今日の点取占い206 | トップページ | おはなのど飴 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「小さいおうち」:謎解きではなく・・・:

» 『小さいおうち』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「小さいおうち」□監督 山田洋次□脚本 山田洋次、平松恵美子□原作 中島京子□キャスト 松 たか子、黒木 華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木 聡、倍賞千恵子■鑑賞日 1月25日(土)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★...... [続きを読む]

受信: 2014年2月12日 (水) 00時36分

» 『小さいおうち』 (2014) [相木悟の映画評]
激動の時代、中流家庭のひみつが投げかけるメッセージ! 新しい視点で過去に切り込み、現代を照射する意欲的な一作ではあるのだが…。 本作は、直木賞を受賞した中島京子女史の同名小説の映画化。メガホンをとったのは、82作(!)もの作品を連綿と紡いできた生ける伝...... [続きを読む]

受信: 2014年2月12日 (水) 01時02分

» 小さいおうち〜長く生き過ぎた変われない私 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。中島京子原作、山田洋次監督。松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、林家正蔵、ラサール石井、あき ... [続きを読む]

受信: 2014年2月12日 (水) 10時13分

» 小さいおうち [映画的・絵画的・音楽的]
 『小さいおうち』を、吉祥寺バウスシアターで見ました。 (1)山田洋次監督の新作ということで映画館に行ってきました(注1)。  本作は、中島京子氏が直木賞(2010年上期)を受賞した同名の小説(文春文庫)に基づくもの。  戦前の山の手(注2)の丘の上に建てられた...... [続きを読む]

受信: 2014年2月12日 (水) 20時17分

» 【小さいおうち】小百合のおうち [映画@見取り八段]
小さいおうち    監督: 山田洋次    出演: 松たか子、倍賞千恵子、吉岡秀隆、黒木華、妻夫木聡、片岡孝太郎、橋爪功、吉行和子、室井滋、木村文乃、夏川結衣、中嶋朋子、松金よね子、笹野高史、ラサール石井、林家正蔵、螢雪次朗、市川福太郎、秋山聡、あき竹城、…... [続きを読む]

受信: 2014年2月12日 (水) 21時16分

» 映画「小さいおうち」感想 [帰ってきた二次元に愛をこめて☆]
大げさな出来事や奇抜な仕掛けで驚かす映画ではない。淡々と日常を描きながら、その輪郭は鋭い線で描かれている。そして何気ない積み重ねが、後に大きな出来事になっていく。このあたりの上手さは山田洋次監督らしい。 小道具も周辺の町や人の作り方も、隅々まで神経が行き届いている。 タキと健史、老婆と性急な大学生との対比が、まず上手い。実際にその時代を肌で感じて来た者のいう事を、若者は自...... [続きを読む]

受信: 2014年2月13日 (木) 22時03分

» ショートレビュー「小さいおうち・・・・・評価額1650円」 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
彼女が、本当に隠していた事。 ある老女の心の内に70年間秘められていた秘密を巡る、ミステリアスな心理ドラマだ。 山田洋次にとっては、挑戦的な新境地と言っても良いと思う。 舞台は昭和10年代、東京山の手の住宅地に建つ赤い屋根の小さな洋館。 山形の寒村から上京した少女・タキは、この家で女中として働きはじめる。 玩具メーカーの重役を務める旦那様と都会的で垢抜けた時子奥様は優しく、幼い...... [続きを読む]

受信: 2014年2月14日 (金) 21時45分

» 映画・小さいおうち [読書と映画とガーデニング]
2014年 日本原作 中島京子 物語の時代背景は1935年(昭和10年)から終戦直後、そして2000年(平成12年)から2009年(平成21年)頃ふたつの時代が交差しながら、やがてひとつにつながっていく様が描かれる 東京郊外のモダンな家で起きた、ある恋愛事件の秘密を...... [続きを読む]

受信: 2014年2月15日 (土) 13時23分

» 「小さいおうち」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法]
2014年・日本/松竹=住友商事=テレビ朝日他配給:松竹 監督:山田洋次原作:中島京子脚本:山田洋次、平松恵美子撮影:近森眞史音楽:久石譲名匠・山田洋次の82作目となる監督作で、第143回直木賞を受賞... [続きを読む]

受信: 2014年2月17日 (月) 00時46分

» 『小さいおうち』 原作を離れて「失敗作」を撮る理由 [映画のブログ]
 【ネタバレ注意】  山田洋次監督の『小さいおうち』を鑑賞して、こんなことがあるのかと驚いた。  本作は中島京子氏の小説に基づいて山田洋次監督と平松恵美子氏が脚本を書き、山田洋次監督みずからメガホンを取った作品だ。決して山田洋次監督のオリジナル企画ではない。  にもかかわらず、山田洋次監督と原作のシンクロぶりはどうだろう。私はこれが山田洋次監督のオリジナル作品と云われたら信じたに違...... [続きを読む]

受信: 2014年2月17日 (月) 04時41分

» 小さいおうち [Akira's VOICE]
この世は小さいおうちの集合体なんだな。   [続きを読む]

受信: 2014年2月17日 (月) 10時07分

« 今日の点取占い206 | トップページ | おはなのど飴 »