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2014年3月23日 (日)

「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」:ザ・漂流もの

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映画『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』は、登場人物一人のワン・シチュエーション・ドラマ、(叫びや助けを求める声などの例外以外は)台詞なし と、いろんなものをスリムに削ぎ落とした作品。その心意気やよし。言葉に頼らず、「絵」で見せて語る映画にしています。 77歳になったロバート・レッドフォード版『老人と海』でもありますねえ。

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全編漂流シーンのみ! いきなり冒頭から、何かが起こって主人公のヨットの土手っ腹に穴が開いて漂流しちゃってます。そこからは延々生還へ向けてのひとりぼっちの世界が続きます。って、コレ誰もが気づくように『ゼロ・グラビティ』と非常に似通ったドラマなのですよね。もっと寡黙なのですが。

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レッドフォードは昨年『ランナウェイ 逃亡者』で、若い時の髪形や輪郭のまま顔がシワだらけという妙な年の取り方を拝んだばかり。本作でも同様の年齢不詳感を漂わせながら、海の男のギリギリのサバイバルを、見ている方が消耗しそうなくらいに力演しています。「体当たりの演技」ってフレーズは、女優が脱いだ時じゃなくてこういう時に使ってもらいたいものです。

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ただ後世に残る名作となるためには、何かが不足している気がします。作品の「大きさ」ってこともあるのかも知れませんね。東京での公開がシャンテとシネマカリテだってことが示しているように、作品のもつスケールやポピュラリティが不足しているんですよね。そういうところを削ぎ落としていったから、しょうがないのですが。 かといって、アート・ピクチャーではないし。 時代とのマッチングが今ひとつだったんでしょうかねえ。

ところでエンドロールを見ると、この主人公の役名は“Our Man”。作者の狙いとしては、やはりあなたや私の物語でもあるのでしょう。でも小生だったら・・・、残念ながらここまで持ちこたえられる自信はないですねえ。

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