「百瀬、こっちを向いて。」:中村優子のほうれい線
映画『百瀬、こっちを向いて。』の監督=耶雲哉治さんが、あの「NO MORE 映画泥棒」CMの演出家だということを鑑賞後に知って、驚きました。当たり前だけど本作はトーンが全然違って、ちゃんとした映画の世界だったものですから。それにしても『桐島、部活やめるってよ』に似たタイプのキャスティングなのですよね。主人公男子が内気でもてないメガネくん、その親友がダサダサ男子、百瀬の方もクールな美貌とスタンダード・ボブ(おかっぱ頭)ってことで橋本愛に結びつきますもんね。その他にも『桐島』との共通点は多いと思います。
話自体はなかなかビターで、百瀬の行動にはあまり共感できないものなので、そこは配役にかかってくるのですが、早見あかりはクールに整い過ぎていて、大人っぽ過ぎて、ちょっとミスキャストなのでは・・・。 ここは、もっと素朴で「一生懸命な感じ」のする女の子が適任だったっと思います。
『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS)でピッチャー役をやっている工藤阿須加が出ているのですが(宮崎先輩役)、なんと彼はあの工藤公康投手の息子さんなんですってね。驚きました。
ところで本作の脚本は狗飼恭子さん。あの『ストロベリーショートケイクス』のホンを書いた方ですが、同作でとても印象的だった中村優子さんが重要な役で出演しています。主人公男子が大人になって(向井理になって)再会する神林先輩の役。つまり石橋杏奈が年取って1児の母となったのが中村優子という設定です。これがなかなかどうして、いいのです。
最近は東京ガスのCMで「私も綾野剛がいい」とかつぶやいている中村さんですが(あのCMでも微妙な表情演技が抜群です)、大江戸はこの方の演技力とか存在自体を、とっても評価しているのです(『血と骨』とか『ストロベリーショートケイクス』とか・・・)。本作ではナチュラルに、無表情に演技しながら、終盤の「女の深み」でぞくっとさせます。無意識の凄みを演技で出せる人なのです。なにしろ作ったような笑顔を浮かべながら、そのほうれい線に芝居させている(!)のですから、恐るべし中村優子です。 小生は正統派の演技力で現在いちばん凄い女優は池脇千鶴だと思っていますが、変化球で凄いのはこの中村優子さんだと思います(「つぐみ」さんも異色で凄かったのですが、変な方に行っちゃいましたから)。
それにしても高校生時代には1-2歳の差だったはずなのに、向井と中村ではかなり年の差があるように見えてしまいます。そこらがちょっと気にはなりました。
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