「ヴィオレッタ」:セラピーとしての児童虐待ホラー?
映画『ヴィオレッタ』は、きわどそうな題材の割にはごくまっとうなドラマ。でも母親がまっとうじゃない、どころか超クレイジーなので、そこが不快かつスリリングです。そして、あの写真集『Eva』の少女エヴァ・イオネスコが長じて映画監督となり、これを作ったってことが、スリリングなんだか自らのトラウマのセラピーなんだかよくわからないところでもあります。
母親役のエザベル・ユペールがスゴイです。「選ばれし者である自分のために地球は回っている」と考えている女。娘でも自分の母でも誰でも、自分に奉仕するために存在するのだという明快な行動原理で突っ走る様が、あなおそろしやです。自分の娘だろうと、他人の心なんかは知ったこっちゃありません。見ていてかなりムカつきます。精神病院に叩きこみたい感じです。さすがはイザベル・ユペールです。ホラーに近い芝居です。 まあ、いきなりトイレを開けて写真撮ったりまでしちゃうあたりも含め、今ならもっと早々に児童虐待で逮捕されちゃうところでしょうけど。
撮影時10歳だったというアナマリア・ヴァルトロメイちゃんが圧倒的な美少女ぶりを見せつけます。他の子とは格が2ケタ違う感じ。
それにしても、忌まわしき少女時代ですよね。しくしく。母親は選べない。おまけに、おばあちゃんが(いい人なんだけど)頼りにならなくってねえ。こりゃー、人間が歪(いびつ)になっちゃいますよ。だからそのトラウマを消すために、この映画作りが必要だったのでは・・・と。
でも芸術って確かに狂った人が道を切り拓いてきたという歴史はあります。作品が後世でどう評価されるかということと、背景の非道さとか当事者の苦しみとかは全くの別問題。まあ、それはそれで事実として受け止めるとして、じゃあそいつはどれほどの「芸術」なの? その背後の苦しみを凌駕するだけのものがあるの? となると、・・・うーん、難し過ぎる問題ですね。大江戸的には、(自分の娘とはいえ)他人を巻き込まないでくれよって感じです。
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