「チョコレートドーナツ」:声高にではなく・・・

映画『チョコレートドーナツ』は、泣ける映画として意外な大ヒットを続けているようです。シネスイッチ銀座のロビーには、上映前に何枚ずつか持っていけるように箱ティッシュがいくつも用意してありました。でも、そんなに泣けますかねえ、この映画?
正直なところ小生は全く泣けませんでした。近年は涙腺弱いのに。それは別に悪いことじゃなくて、変にお涙頂戴に走っていないということです。 「小さな声」の訴えかけで、児童福祉関係者や裁判制度やマイノリティーへの偏見・差別に対する静かな怒りが、観る者に迫ります。「声高に」ではないところに好感が持てるのです。

ダウン症のマルコくんを演じるアイザック・レイヴァが、きっちり演技していて素晴らしいです。観客に彼のことを身内のように愛おしく感じさせる、というこの映画にとっての肝腎要の部分で成功しています。しかも変にじめじめしないのが結構ですね。彼が大好きな人形のジェニーは、顔が怖かったけど。

一方でダウン症の子供を出して、一方でゲイのカップル(しかも'79年なので、まだ世の中の差別意識が露骨)を出して、ハートに訴える作劇的にはテッパンです(実話に基づくそうですが)。 で、差別的な上司役のおじさん(アメリカ映画で時々見かける顔なんですが、名前を知りません)が、本当にムカつくんですよねー。殴ってやりたいほどのいやらしさ全開で、唾棄すべき悪役を演じてました。うまいもんだ。
でもやっぱりアラン・カミングのキュートさで、この映画の格がワンランク上がっています。彼は今、往年のアル・パチーノのようなテイストが出せる俳優になっております。もう一段進化して、名優の域に到達できる人だと思います。
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マイノリティが訴えかける真の家族愛!
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一昔前より理解は深まったとはいえ、日本を含む各国では依然として同性愛者は結婚が認められず、社会保障が受けられない等、生きていく上で不遇な立場に甘んじてい...... [続きを読む]
受信: 2014年6月14日 (土) 23時46分
» チョコレートドーナツ [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。原題:Any Day Now(今日にも)。トラヴィス・ファイン監督。アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、フランシス・フィッシャー。 主演のアラン ... [続きを読む]
受信: 2014年6月14日 (土) 23時53分
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銀座シネスイッチ、久々の大ヒット作らしい。
たまたま金曜日のサービスディということもあり
なんと数年ぶりに立ち見での鑑賞でした〜。でも素晴らしい作品でまったく眠くもならず!
1970年代のアメリカ。ある日惹かれ合い出会った一組のゲイ・カップルが、
隣...... [続きを読む]
受信: 2014年6月15日 (日) 22時48分
» チョコレートドーナツ ★★★★ [パピとママ映画のblog]
1970年代アメリカの実話を基に、母親に見捨てられたダウン症の少年と一緒に暮らすため、司法や周囲の偏見と闘うゲイカップルの姿を描いた人間ドラマ。ゲイであるがゆえに法の壁に阻まれる苦悩を、テレビドラマ「グッド・ワイフ」シリーズなどアラン・カミングと、『LOOPER...... [続きを読む]
受信: 2014年6月16日 (月) 18時14分
» ショートレビュー「チョコレートドーナツ・・・・・評価額1650円」 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
ほんとうの家、ほんとうの家族とは。
1970年代のアメリカ。
ひょんな事から家族となった、ゲイのカップルとダウン症の少年。
しかし彼らの幸せな時は、世間の偏見と不寛容によってあっけなく終わりを迎える。
共同脚本家のジョージ・アーサー・ブルームが、昔住んでいたアパートの住人たちをモデルに書きかげた脚本は、20年間忘れ去られていたという。
彼の息子で本作の音楽監修を担当しているPJ...... [続きを読む]
受信: 2014年6月17日 (火) 20時35分
» 映画『チョコレートドーナツ』観たよウゥッ・・・(´;ω;`) [よくばりアンテナ]
やられた・・・・泣き過ぎです。嗚咽をもらしてしまいそうになりました。
帰宅して公式HPなど見て、また思い出して泣いてます(ノ_・、)グスン…
きっと、誰かにおすすめしようとして、タイトルを口に出すだけで涙して
笑われてしまう涙腺弱いアラフィフです・・・・
ふとしたきっかけで一緒に暮らすことになった、
ショーダンサーのゲイ・ルディ(アラン・カミング)、
弁護士...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 16時35分
» チョコレートドーナツ 感想 [にきログ]
久しぶりの映画感想ですね
話題になっていた作品のようで、見に行こうと誘われたため鑑賞
相も変わらず事前情報なしで見た映画ですがよかったですね
自分は事前情報を入れると勝手にハードルが上がったりして楽しめないことがあるので(笑)
あらすじ
1979年カリフォルニア、歌手を目指しているショーダンサーのルディ(アラン・カミング)と弁護士のポール(ギャレット・ディラハント)はゲイカ...... [続きを読む]
受信: 2014年7月13日 (日) 01時43分
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