「スイートプールサイド」:リアリティの補完が必要
映画『スイートプールサイド』は「生えない」「生えすぎ」という毛の悩み、もっと突き詰めれば「剃毛」という題材だけで103分を突っ走る独創的な作品です。マンガが原作だそうですが、同じくマンガが原作の『月光の囁き』('99・塩田明彦監督)を思い出さずにはいられませんでした。
主役の須賀健太くんはあの『ALWAYS三丁目の夕日』の男の子ですが、まあ大きくなったと言うべきか、まだ妙に子供じゃんと言うべきか・・・。でも、終盤に見せる狂気の演技に、何かヤバイものが混ざっていたのが役者としてお手柄です。
一方の刈谷友衣子ちゃんは昨年の『中学生円山』といい本作といい、変でキワドイ状況にばかり陥れられますねえ。そういう星の下に生まれたのでしょうか。かわいいのに、数奇な役者人生を歩んでおります。
マンガから実写映画にするに当たって必要な「リアリティの補完」のための改変があまり成されていないので、ツッコミ所は結構多いです。そんな橋の下、丸見えすぎるだろう!とか、いったいどこで水着に着替えたんだよ?とか、そんな場所があるんならそこで剃ればいいじゃんとか・・・。 最初っから剃り方教えてやれよ!ってのもありますけど、そうすると話自体が成立しなくなっちゃうんでね。同様に、(電気)レディース・シェーバーがあるじゃん!ってのもここでは言っちゃあおしまいのようです。
そこらへんで脚本と演出の映画変換作業をもう少し丁寧にやっていったら、『月光の囁き』のように「現代の谷崎」的世界に近づけたのだと思いますが、そうはなれませんでした。塩田明彦の方がセンスがあったし、塩田明彦の方がヘンタイだったのでしょう。 ラストの切れ味(剃り味?)も今一歩でした。
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