「her 世界でひとつの彼女」:恋愛と心を哲学する

映画『her 世界でひとつの彼女』の映像において、嫌でも目に残るのはホアキン・フェニックスの服やオフィスのパーテーションやPCの画像などに使われているヴィヴィッドなオレンジっぽい赤=緋色=scarlet→ああ、本作のヒロインとも呼ぶべきOSの声を担当しているスカーレット・ヨハンソン(ジョハンソン)の肉体的不在を補うスパイク・ジョーンズ監督ならではの洒落っ気なのでしょうね。それにしてもいい色なんだ、これが。

ホアキン・フェニックスがこのタイプの役をやるってのは、ちょっとしたオドロキ。もっとクレイジーな役とか暴力的な役とかの印象が強いもので・・・。夢見るミスター・ロマンティック。'7-80年代のリチャード・ドレイファスみたいな雰囲気がありますね。そういえばドレイファスって消えちゃいましたねー。それと、メガネにヒゲのホアキンって、グルーチョ・マルクスっぽかったりします(笑)。

スカーレット・ヨハンソンの声で面白いのは、いかにもな電子声とか理想の女性的な声じゃないってところ。ちょっとガラガラと枯れてて、はすっぱに近いほどのカジュアル感を漂わせていて、むしろ電子ヴォイスにしてはナマナマし過ぎる感じ。まあ、その線を狙ったのでしょうけれど・・・。

恋愛感情とか人間の心とかを突きつめて考えていった物語には、これからの時代を考察する哲学性が感じられます。ちょっと奇異なシチェーションから始まって、普遍的な本質に至るのです。
ラストの「高層ビルの夜景を見つめてベンチに座っている後ろ姿の男と女」っていう図は、ウディ・アレンの『マンハッタン』を思わせたりもするのでした。あのほろ苦さやシニシズムに較べると、本作はチャーミングに甘口なんですけどね。
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【ネタバレ注意】
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her
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