村上春樹編訳短編集「恋しくて」
昨秋刊行された村上春樹編訳による短編集『恋しくて』を、ようやく古本屋で買って読みました。その名の示す通り、恋愛小説ばかりを集めたアンソロジーです。欧米の作家9人の9編に加えて、村上氏書きおろしの1編で成り立っています。表紙に使われた絵は竹久夢二の『黒船屋』ですね。
当然作品の出来も、好みに合うかどうかもさまざまなレベルなのですが、正直全体的にさほど面白くはなく、9作を読んでいる間ずっと、「早く最後の村上作品を読みたい」と思っていたのでした。
で、やっぱりこの村上作品『恋するザムザ』がだんぜん面白いのです(少なくとも小生にとっては)。不条理をひっくり返した不条理が、「マイナス×マイナス=プラス」となっているような話です。カフカにオマージュを捧げながら、村上ワールド以外の何ものでもありません。
でもローレン・グロフという米作家の『L・デバードとアリエット--愛の物語』は、中編と言ってもいい分量以上に堂々たる半生ドラマとなっていて、なかなかに面白かったことを付記しておきます。
春樹さんによる解説及び「恋愛甘辛度」なる★の数による評価がついているのも、ハルキストのはしくれとしては嬉しいところでした。
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