「複製された男」:驚愕のラスト!世紀の怪作!
(多少のネタバレあり) 映画『複製された男』のラストには、心底驚きました。あまりに想定不可能な光景に、声が出るほどビックリしましたし、あまりのシュールさにぶっとびました。笑いたくなるほど。足下の地面を急に取り払われてしまったかのような感覚。今後映画史に「想像を絶するラスト」として、永くその名を刻んでいくことになるのでしょう。
しかもそのラストのおかげで、それまで1時間半近く観てきたこの作品(上映時間90分)が、180度ひっくり返ってしまうのです。ラストシーンは、その「反芻行為」の始まりに過ぎません。いくつもの謎やメタファーに満ちたこの映画は、観終わってからも「鑑賞」が続いて行くのです。そういった意味で、本作の劇場プログラムは秀逸です。片側から見ていくと、真ん中の綴じページ以降は文字や図版がさかさまになっている。つまり180度ひっくり返った両表紙スタイルで、真ん中ページで出合う形なのです。作品の内容を見事に反映したデザインとなっています。
それにしてもドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と同じカナダ出身のデイヴィッド・クローネンバーグやアトム・エゴヤンのような冷えた空気と無機質な悪夢のような狂気が感じられます。特にクローネンバーグの諸作との符合--ビデオ(本作はDVDですが)、双子(本作は双子ではないのですが)、自動車事故、蜘蛛 など--には、偶然を超えたサムシングを感じてしまいます。
いやー、こんなヘンな映画、かなりスレた映画ファンの大江戸にしてもちょっと記憶にないほどの衝撃です。まあ「不条理劇」と言ってしまえば、それはそれで収まりがいいのですけれど、なんかそれ以上に「映画の新しい次元を構築しようとする試み」のようにも思え、いろんな意味で「2回目を観たくなる映画」には違いありません。ま、それ以前に、一度観て降参しちゃった人、ブーイングを浴びせる人の方が圧倒的に多い気もいたしますけどね。
この世紀の怪作、小生は支持します!
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