「渇き。」:劇薬のダメージを覚悟せよ
映画『渇き。』は、『下妻物語』以来2年ごとに作品を発表して来た中島哲也監督が『告白』以来4年を経て世に問う問題作。『進撃の巨人』実写版が頓挫(というか監督交代での再スタート)しちゃった影響で間があいちゃったんでしょうね。 いやー、コピー通りの「劇薬エンタテインメント」でした。好き嫌い分かれますよねえ、大江戸はもちろん好きですけど。いずれにしても、観る者に重量級のダメージを与えてくれる作品であります。
R15+ですが、かなりエグくバイオレントです。血が飛んだり、体が切れたりしまくります。まあ血しぶきポップアート的な絵の挿入カット(メインタイトルバック同様の感覚)なんかで衝撃を和らげたりしていますが、こういうのに弱い人には刺激が強いかも知れません。
でもそういう描写以上に、「愛する娘は、バケモノでした。」っていうコピーの示すような映画なので、そこらへんの心理的なグロテスクが暗く肥大化していく様子の方が、胸に重苦しく淀んでいきます。 そう、あの『ツイン・ピークス』を思わずにはいられませんでした。登場人物のほとんどが秘密を持っていたり、ヤバイ奴だったりってあたりも含めて。
役所広司は中島監督が言うように、「好感度を下げる」大熱演。かなりの野獣(元)刑事ぶりです。汗とタバコとミドル脂臭と血の匂いが漂ってきそうなアンチ・ヒーローです。 一方の娘役・小松菜奈は「これからは普通の女の子役になっちゃうんだなあ」と思うと残念です。まあ、本作でも外見は普通の女の子なのですけど。 妻夫木聡とオダギリジョーに関しては、「こういう使い方があるんだぁ」と驚きました。特に「へらへら笑い」を絶やさない妻夫木に関しては、本作と(真逆の)『ぼくたちの家族』の2本で、「ただのバカ役者じゃなかったんだぁ。ごめんなさい」と、その演技力にようやく気付きました。終盤の役所とオダギリの対決場面は、ちょっと『太陽を盗んだ男』の沢田研二と菅原文太の対決を思わせる演出や構図もありました。
カット割りも、ポップな映像の挿入も、音楽も、アクの強い人々も、青春のキラキラ感も、描写の毒気も、みんな中島哲也ならではの世界です。クレイジーで最強です。
(以降ネタバレあり) ラストで、降り積もった白い雪を掘って掘って・・・ってのは、覚醒剤のメタファーだと見ました。さて、どこからどこまでが、暴走オヤジの幻影だったのやら・・・。
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