「片岡鶴太郎展」:色とセンスと椿と金魚
松屋銀座で『画業20周年 片岡鶴太郎展 還暦紅(かんれきくれない)』(~9/8)を鑑賞。鶴太郎さんが今や芸人、俳優というよりも立派な絵描きさんだということは知っておりましたが、その作品をまとめて見たことはなかったので、正直驚きました。ここまで素晴らしいとは思っていなかったもので・・・。不明を恥じねば。
会場を入ってすぐのご挨拶パネルに描いてある牡丹の花びらが落ち、金魚が泳ぎ出すのでびっくり。反対側から映像を投影しているのでありました。
魚、野菜、トンボ、徳利、桜、江戸前寿司などをモチーフに、墨と岩絵具や顔彩、パステルなどで自由に描き、そこに大胆な文字で洒落た言葉を合わせたりもします。何作品か見ているとすぐに、大きな才能を感じることができます。芸能人の余技なんてレベルでないことは明らかです。
とにかく色がいいのです! 自然の色の再現も、独自の夢幻的な色彩も見事に美しく、天才的センスを感じさせます。サンマの色なんか、作品ごとに趣向の違う色遣いがことごとく素晴らしいのです。 にじみやぼかしの使い方の巧みさ、そして文字の良さ! 多くの先人に学びながらも、独自の鶴太郎ワールドを築き上げています。
そしてセンスの良さに脱帽です。最後の方にあったエビを描いた絵をはじめ、落款の位置の「具合の良さ」に何度か唸らされました。ゴリラの顔の絵なんかもそうですが、デザイン的センスもしっかりお持ちなのでしょう。
そんな彼のライフワーク的モチーフが「椿」。そしてこの還暦展のモチーフが「金魚」(メイン作品とも言うべき金魚だらけの二曲屏風はやはり見事で、見入ってしまいました)。そう、入口のパネルから、それを示してあったのですね。椿と金魚に関しては、映像コーナーでも、本人が饒舌に語っておりました。
着物の染め絵とか焼きものとかもいちいち見事で、これが「マッチで~す」とか言ってた人なのかと思うと、人間って変わるものだなあという思いに打たれたりします。
まあ全てを手放しで絶賛できるかというとそんなこともなく、こってりと描きこんだ花木の絵などはともするとアニメの背景画風に見えましたし、ちょっと構図が甘いんじゃないの?ってな作品も散見されました。
それでもここ半年ぐらいは油絵具を使った創作(これはまだこれから、という印象)に傾くなど、まだまだ新境地を拓いていきそうな鶴太郎氏。彼の作品群を、こうしてまとめて見ることができて良かったと思った大江戸なのでした(本日夕方、小生が見ていた時にちょうど鶴太郎さんがおつきの方々と共に会場内を歩いていらっしゃいました)。
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