« 「がじまる食堂の恋」:波瑠の薄味ラブ・ストーリー | トップページ | 「イヴ・サンローラン」:映画が弾まない、輝かない »

2014年9月25日 (木)

「イン・ザ・ヒーロー」:ああ、小池要之助

348678_003

映画『イン・ザ・ヒーロー』は東映版『蒲田行進曲』、つまり「大泉行進曲」なわけですね。ベタに通俗的な話で押しまくりますが、悪くないです。それは人生の苦みを抱えた中年男の主人公で、『ロッキー』的な勝負をするからです。こういう善意の娯楽映画って、作られ続けなきゃいけないと思うのです。

348678_001

スーツアクターたちの舞台や稽古や撮影現場などの描写が面白く、他の裏方たちの描写と合わせてきちんと描いていることが、まず嬉しいところ。むしろ東映アクション版『アメリカの夜』と言った方がいいかも知れませんね。

ちょっと失敗しちゃったキャラクターは、福士蒼太の若手アイドルです。最初は嫌な奴だったのが、だんだんいい奴になっていくという定番パターンなのですが、陰で筋トレとか努力してたり、小さな弟、妹を抱えて苦労してたりといった「いい人要素」を小出しにしていくのは良いとして、序盤の言動があまりにも傲慢な悪い奴。なんだか不自然なほど傍若無人なキャラクターを無理くり作ってるみたいで、ちとやり348678_004過ぎというか、上手に展開できなかった恨みが残ります。あそこまでひどい奴が、短期間でこうも変わるかよ!って感じで。

クライマックスのアクションは、映画内での監督さんが「アクションの歴史を変える」とか息巻いてる割には、いつもの「東映の殺陣」でした(『るろうに剣心』のがよっぽど歴史を変えているんですけど)。 しかも「ワイヤー、CGを使わないことに意義がある!」とか騒いでるくせに、この映画(『イン・ザ・ヒー348678_007ロー』)のこの場面では、ワイヤー、CG使いまくり・・・って、それはないでしょ!

まあ、でも気分悪くない終わり方で、まずまず楽しめました。エンドタイトルの最後に映画内映画の監督が「映画は監督のものだ!」とか息巻くのが、誰に言ってんだ? 武正晴監督の意見なのか? って感じで、微妙過ぎて、観客としてはいい気分ではなかったですけど。

エンドタイトルに出てくる過去の東映系アクションの映像の中に、優作の『探偵物語』(TV・1980)の19話「影を捨てた男」のフッテージが出て来ました。そして「小池要之助監督」という文字! 小池要之助は、助監督としてならし、『探偵物語』のこのエピソードで遂に監督に昇進した(その後、同作の最終回も監督)のですが、スタイリッシュな映像が当時ピカイチだった工藤栄一をしのぐほどカッコ良くて、感嘆したものです。その後に、松田優作主演の『ア・ホーマンス』(1986)という作品で遂に「映画監督デビュー」となったのですが、撮影中に優作と対立して解任されてしまった(というか、優作が降ろして、代わりに自分で監督をやった=優作唯一の監督作品)という悲劇の人なのです。調べてみたら、小池さんはその後も監督として映画を撮ることはなく、2010年に68歳で亡くなっていました。こういう裏方さんたちのさまざまな人生の集合で、映画というものが成り立っています。合掌。

|

« 「がじまる食堂の恋」:波瑠の薄味ラブ・ストーリー | トップページ | 「イヴ・サンローラン」:映画が弾まない、輝かない »

コメント

こんばんは。
「小池要之助」の名前につられてやって参りました。
「探偵物語」はリアルタイムで見ておりましたが、お書きの「影を捨てた男」の予告編で松田優作が、「探偵物語にビッグな新人監督が登場!その名は小池要之助!」と絶叫していたので、それ以来気になっていた人でした。最終回の予告編でも優作と肩を並べて画面に登場する等、同郷(下関)という事のあってか優作にえらく気に入られていたと記憶しています。
最終話の「ダウンタウンブルース」は、そのシャープでスタイリッシュな演出に魅せられました。
そんなわけで劇場監督デビューとなる「ア・ホーマンス」には凄く期待していたのに、残念な結果となりました。
その数年後、丸山昇一脚本・優作主演の「ドッグ・レース」を小池さんが監督するというニュースが流れ、待ち望んでいましたのに、これも流れてしまいました。つくづく不運な方でした。(これは後に「ドッグ・レース 犬走る」として崔洋一監督で映画化)
ちょうどその時期は日本映画がどん底の時で、新人が映画を撮るには厳しい時代だった事も災いしたようです。
この人が監督作を発表していたなら、ひょっとしたら映画界に新風を巻き起こしていたかも知れません。無念ですね。
でも、大江戸さんのように小池さんの名前を覚えていてくれる映画ファンがいてくれるのは心強いです。
どこかで、小池さんが監督したテレビ作品を特集上映してくれないでしょうかね。再評価の機運が高まる事を期待したいと思います。

投稿: Kei | 2014年10月 3日 (金) 01時15分

Keiさん、コメントありがとうございます!
そうそう、「ドッグレース」の話もありましたねえ。
「影を捨てた男」の映像美!ラストの噴水のハイスピードの映像とか、素晴らしかったですもん。そこに何とも言えぬハードボイルド的情感もきっちり漂っていて…。
学生の頃、映画の文集に「好きな助監督=小池要之助」と書いて、まわりから「助監督の力量なんて、どうやって判断するんだあ!?」と突っ込まれました。まあ、彼が助監督でついた作品がことごとく素晴らしかったのと、TV「探偵物語」の2話分の実績で判断したのですけれどね。

投稿: 大江戸時夫 | 2014年10月 3日 (金) 09時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/42098/57490721

この記事へのトラックバック一覧です: 「イン・ザ・ヒーロー」:ああ、小池要之助:

» 『 イン・ザ・ヒーロー 』やっぱ赤だよね [映画@見取り八段]
イン・ザ・ヒーロー      監督: 武正晴    キャスト: 唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、草野イニ、日向丈、小出恵介、及川光博、杉咲花、加藤雅也、松方弘樹、和久井映見、角替和枝、片山景介、木下ほうか、小宮孝泰、山口大地、本多遼、白洲迅、小宮有紗…... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 00時22分

» イン・ザ・ヒーロー [佐藤秀の徒然幻視録]
本物の撮影事故? 火が消えてない! 公式サイト。武正晴監督。唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、草野イニ、日向丈、小出恵介、及川光博、杉咲花、イ・ジュニク、加藤雅也、松 ... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 00時23分

» 『イン・ザ・ヒーロー』 (2014) [相木悟の映画評]
夢をおう、熱き男の生き様に感涙したいのは山々なのだが…?! ストーリーを聞いただけで胸が熱くなるも、色々とひっかかり、終始ノレず。実に惜しい一作であった。 スーツアクターといえば、特撮ファンにとってはすっかりお馴染みの存在である。大野剣友会が回顧録でピ...... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 01時01分

» 映画『イン・ザ・ヒーロー』★熱い!炎のヒーローたちへのオマージュ [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について  http://cinema.pia.co.jp/title/164468/ ↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。 映画『太秦ライムライト』で、斬られ役ひとすじのベテラン俳優を 地で行くように、福本清三さんが演じられましたが その人の経験が重なる作品には、興味を惹かれます。 この作品も、スーツアクターだった..... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 02時09分

» イン・ザ・ヒーロー [映画的・絵画的・音楽的]
 『イン・ザ・ヒーロー』を渋谷TOEIで見てきました。 (1)日曜日朝のトーク番組「ボクらの時代」に主演の唐沢寿明が出演していたこともあって(注2)、映画館に行ってきました。  本作(注1)の主役は、ヒーローのスーツを着たり怪獣の着ぐるみを着たりして演じるスー...... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 05時13分

» 『イン・ザ・ヒーロー』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「イン・ザ・ヒーロー」□監督 武 正晴□脚本 水野敬也、李鳳宇□キャスト 唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島 進、草野 仁■鑑賞日 9月7日(日)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想>  スー...... [続きを読む]

受信: 2014年9月26日 (金) 08時24分

» イン・ザ・ヒーロー [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2014/09/06公開(09/04試写) 日本 124分監督:武正晴出演:唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、草野イニ、日向丈、小出恵介、加藤雅也、和久井映見 オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ夢は必ず叶うってことを 下落合ヒーローアクションクラブの社長にして、その道...... [続きを読む]

受信: 2014年9月28日 (日) 00時18分

» イン・ザ・ヒーロー [象のロケット]
42歳の本城渉は「下落合ヒーローアクションクラブ」の社長兼スーツアクター(着ぐるみ等の人体スーツを着用して演技するアクション俳優、スタントマン)。 この道25年の大ベテランで、肉体はもうボロボロだった。 彼は、生意気な人気若手俳優・一ノ瀬リョウへの、殺陣の指導を任される。 そんな時、有名スタントマンが危険過ぎると降板したハリウッド映画の忍者役が、本城に回って来るのだが…。 隠れたヒーローの物語。... [続きを読む]

受信: 2014年9月28日 (日) 05時26分

» イン・ザ・ヒーロー [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2014/09/06公開(09/04試写) 日本 124分監督:武正晴出演:唐沢寿明、福士蒼汰、黒谷友香、寺島進、草野イニ、日向丈、小出恵介、加藤雅也、和久井映見 オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ夢は必ず叶うってことを 下落合ヒーローアクションクラブの社長にして、その道...... [続きを読む]

受信: 2014年9月29日 (月) 13時52分

» [映画][☆☆☆☆★]「イン・ザ・ヒーロー」感想 [流浪の狂人ブログ〜旅路より〜]
 「モンゴル野球青春記」の武正晴監督、「20世紀少年」の唐沢寿明主演。日夜、命がけのスタントで、映画や特撮番組を陰から支えるスーツアクター達の活躍と苦悩の日々を描いた、アクションヒューマンストーリー。 小生のような特撮ヲタクにとっては、何がどうでも好きに... [続きを読む]

受信: 2014年9月30日 (火) 19時25分

» 「イン・ザ・ヒーロー」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法 ]
2014年・日本/ガーデングループ=RESPECT配給:東映 監督:武 正晴脚本:水野敬也、李 鳳宇エグゼクティブプロデューサー:李 鳳宇撮影:木村信也アクション監督:柴原孝典特殊スーツに身を包み、映... [続きを読む]

受信: 2014年10月 2日 (木) 00時44分

» イン・ザ・ヒーロー : アクションには夢がある [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
 ここ数日、広島では"晴れ”の天気が続いております。8月はほとんど”雨"だった分、9月は晴れやかに行きたいものです。ちなみに、本日紹介する作品も、観終った後に晴れやかな [続きを読む]

受信: 2014年10月 6日 (月) 21時15分

« 「がじまる食堂の恋」:波瑠の薄味ラブ・ストーリー | トップページ | 「イヴ・サンローラン」:映画が弾まない、輝かない »