「イヴ・サンローラン」:映画が弾まない、輝かない
映画『イヴ・サンローラン』は思ったほどファッション史やサンローラン・スタイリング寄りの企画ではなく、いわばこの悩める芸術家とそのパートナーとの恋愛クロニクルといった趣き。それでも冒頭のディオールとの場面や、いくつかのファッションショーの場面では、さすがなひらめきを見せてくれるのですけど・・・。
イヴのパートナーであるピエールがかなり大きな存在として描かれていますが、大き過ぎて作品のバランスが崩れるほど。まあこのピエールさんが、本作の制作に全面協力しているそうなので、しょうがなかったんでしょうかね。この人の風貌のせいもあって、二人の関係が、ビートルズとそのマネジャーであったブライアン・エプスタインとの関係に類似したものに見えてきます。。裏方としての献身とか、天才を支える事務方ってところが共通していて。
サンローランそっくりなペール・ニネの演技は、多くの人が賞賛していますが、確かに若き日々から老年までを「らしく」演じました。ある種のカリスマ性も感じられますしね。
ただ。物語としての山場や起伏に乏しく、映画としては弾まない、輝かない作品だったりしています。残念なことです。
それにしても「YSL」のロゴタイプって秀逸ですよね。あの書体、縦長なバランス、文字の配置。実にスマートに洗練されております。あれがイヴの美学なんですよね。
| 固定リンク
コメント