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2014年10月17日 (金)

「海を感じる時」:'70年代邦画の湿り気

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映画『海を感じる時』は、荒井晴彦脚本らしいザ・日本映画。なんと荒井氏が30年も前に書いた脚本だそうです。原作が発表された1978年ごろの時代設定で、実に「懐かしい'70年代の邦画」の湿り気を含んだ匂いがたっぷりします。あるいはにっかつロマンポルノの名作がまとっていた匂いが。

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'65年生まれの安藤尋監督は、この'70年代をある種の「時代劇」として撮っています。つまりきっちりした時代考証と、その再現。中途半端に古くて難しい時代なんですけど、衣装も美術、小道具も、よくもまあという凝りようです。そしてウェットな心情や時代の空気の再現も。

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物語の時代背景とそれによる人々の思想、ものの考え方も「古めかしい」と言えばそうなので、そこらが評価の分かれる点かも知れません。でもまあ、ここも「時代劇」なのだと思います。この時代はこうだった、こういう考え方をする人がいた、ということの重なり合い。

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愛されていないのに、一途に、一抹の狂気を含んで恋愛へ突き進んでいく主人公を見ていて、トリュフォーの『アデルの恋の物語』を連想しました。逆境を乗り越えて恋を貫く自分に恋するような物狂いの感覚。

中村久美さん演じる主人公の母が、なんか「違和感」と言っていいほどの独自のリアルさがあって、嫌悪感を禁じ得ない好演でした。

(以降ネタバレあり) ラストで主人公は下着(スリップ)姿で波打ち際まで歩いていき、そこで海を見つめるのですが、ここは映画的にはやはりハダカでないとダメなんじゃないかなあ。海を感じられないんじゃないかなあ。潔くない中途半端感が漂ってしまうんですよね。河瀬直美監督『二つ目の窓』のラストのように、「ハダカ×海」は七難隠すのです。

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