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2014年10月 6日 (月)

「蜩の記」:言葉に頼り過ぎて残念

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映画『蜩の記』は、小泉堯史監督らしい背筋のピンと張った真面目な映画。まさに「良くも悪くも」黒澤明の遺志を継いでいるわけですが、あえて今日そいう映画を作ってくれる人、作れる人=希少種という意味で、大変貴重だと思っています。しかもその作品がことごとく爽やかなのです。

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巻頭の雨が、ただならぬ量でざあざあ降っていて、そこからして「ああ、黒澤だなあ」と感じます。家屋も、その中の美術も、衣装も、風景の撮影も含めて、質の高い「きちんとした」映画作りです。今日び貴重な小泉組のスタイルです。

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だけど本作には、結構ややこしい物語の筋、特に藩の秘密に関する部分を科白に頼り過ぎているという大きな欠点があるのです。はっきり言って途中から、何がどうなっているのか自信がなくなりました。それも1箇所のみならず、いくつもの箇所で重要なあれこれが言葉だけで語られて、「絵」では表されません。小説じゃなくて映画なんだから、絵でわからせてくれないと・・・。なんとも残念なことです。

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その点、ほのかで奥ゆかしい愛の表現は、見事でした。ラスト近くの秋谷夫妻(役所広司・原田美枝子)の味わいにはグッと来ます。また岡田准一が急な石段を登る時に手を差し伸べると、堀北真希が横や後ろをキョロキョロ見て人がいないことを確かめてから、おずおずと手を差し出すあたりも、最高に素晴らしいですね。

どうでもいいけど近年の役所広司さんは、これで『劒岳 点の記』『わが母の記』『蜩の記』と、『記』モノ三冠王です。とりあえず、めでたい。

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コメント


  原作を読んでいないと確かに分かりずらい映画ですよね。
  原作を読んでいたので充分楽しめました。

投稿: 今井 | 2014年10月 9日 (木) 13時35分

今井さん、きっとそうなのでしょうね。
でも大江戸としては、映画だけ観てわかるように作ってくれないといかんでしょう、と思うのであります。

投稿: 大江戸時夫 | 2014年10月 9日 (木) 21時46分

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