「猿の惑星 新世紀(ライジング)」:深く、哀しく

映画『猿の惑星 新世紀(ライジング)』は、重厚な人間(猿)ドラマにして社会風刺や哲学を持った優秀な作品。人間世界の民族間の、あるいは同朋同士の紛争、闘争を見るようで、唸らせられます。もちろんエンタテインメントとしても上出来なので、作品の内在するパワーが更に高まっています。

巻頭とラストに出てくるシーザーの顔のクロースアップが印象的。その思索的な憂いに満ちた表情。全編を通して、シーザーの表情の気高さは、観る者の心にまっすぐ届きます。この新シリーズ1作目の『創世記(ジェネシス)』でも新時代のVFX技術+アンディ・サーキスの芝居に感心したものですが、本作では更に高まっているようにも思えます。もちろんシーザー以外の猿たちの表情も、いちいち見事です。

人間の中にも多くのいい人と多少の悪い奴がいるように、猿の世界も同様でした。そして攻撃、戦争のベースにあるのは常に、「未知の相手への恐怖心」と「互いの違いを認めない不寛容」なのです。
本作には一貫して「悲劇」のトーンが漂っています。物語は「つづく」状態でエンドロールを迎えるためラストが少し物足りない印象ですが、そこらは次作が解決してくれることでしょう。

ところで新宿のミラノ1で観たのですが、1968年の『猿の惑星』第1作もこの劇場で公開されているのです。残念なことに今年の12月31日で閉館するわけですが、11月21日以降は元の「ミラノ座」という館名が復活するのだそうです。もう三月足らず。これから何回来られるのでしょうか。 広場をはさんだ正面のコマ劇場跡地には、TOHOシネマズのシネコンが入る大きなビルが着々と建設されておりました(来年春のオープンだそうです)。

| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「猿の惑星 新世紀(ライジング)」:深く、哀しく:
» 猿の惑星:新世紀(ライジング) [佐藤秀の徒然幻視録]
希望は再エネだったが・・・
公式サイト。英題:Dawn of the Planet of the Apes。マット・リーヴス監督、アンディ・サーキス(モーションピクチャー:シーザー)、ジェイソン・クラーク、ゲイ ... [続きを読む]
受信: 2014年10月 6日 (月) 00時01分
» 『猿の惑星:新世紀(ライジング)』 (2014) [相木悟の映画評]
示唆に富む、猿VS人間の哀しき戦争!
SFエンタメでありながら、身につまされる優れた教訓映画であった。
映画史に燦然と輝きながら、1作目を頂点に回を重ねる毎にB級へと下降線をたどったためか、どこか一段低い娯楽作とみられていた『猿の惑星』シリーズ(68〜73...... [続きを読む]
受信: 2014年10月 6日 (月) 00時30分
» 『猿の惑星:新世紀(ライジング)』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「猿の惑星:新世紀(ライジング)」□監督 マット・リーブス□脚本 マーク・ボンバック、リック・ジャッファ、アマンダ・シルバー□キャスト アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン■鑑賞日 9月20日(土)■...... [続きを読む]
受信: 2014年10月 6日 (月) 08時42分
» 映画『猿の惑星:新世紀(ライジング)』★パンツ1枚くらいの差しかない(?)猿と人間 [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/162643/
↑あらすじ・配役はこちらを参照ください。
人類が、ウイルスで滅びかけている一方
高知能の猿たちは、シーザーをリーダーに、社会を形成。
うまく、棲み分けていたのに
ある日、人間と猿が出逢ってしまう …… のみならず、
人間たちは、猿の棲家(HOME)へ、
足を踏み..... [続きを読む]
受信: 2014年10月 6日 (月) 16時26分
» 猿の惑星:新世紀(ライジング) : ”知能”がもたらす悲劇とは [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
横浜DeNAの中村ノリ、3度目のFA宣言するみたいですね。どこの球団が、彼のような我がままデブを採るのでしょうか。本当に、懲りない人ですなぁ。では、本日紹介する作品はこち [続きを読む]
受信: 2014年10月 6日 (月) 21時05分
» 『 猿の惑星:新世紀(ライジング) 』APE SHALL NEVER KILL APE [映画@見取り八段]
猿の惑星:新世紀(ライジング)~ DAWN OF THE PLANET OF THE APES ~ 監督: マット・リーヴス キャスト: アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、ケリー・ラッセル、トビー・ケベル、コディ・スミット=マクフィー、カーク…... [続きを読む]
受信: 2014年10月 7日 (火) 01時23分
» [映画『猿の惑星:新世紀(ライジング)』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆・・・かつて、小林よしのりのマンガに影響され、思想を語るようになった者は、その考えの浅さを含めて「コヴァ」と揶揄されていた。
まあ、隠さずに言えば、私もかなり影響された口だ。
この、『猿の惑星 ライジング』は、対立にある人間と猿たち、その双方に、「...... [続きを読む]
受信: 2014年10月 7日 (火) 10時05分
» 猿の惑星:新世紀(ライジング) [象のロケット]
天性のリーダーシップで2000頭の猿を統率するシーザーは、サンフランシスコ郊外の森の奥深くに、巨大なコミュニティを築き上げていた。 一方、10年前に世界的に拡散したウイルスの影響で人類の大半は死滅しており、免疫を持つわずかな生存者たちが、荒廃したサンフランシスコ都市部で共同生活を送っていた。 互いの存在を忘れつつあった人間と猿は森で遭遇し、互いにパニックに陥ってしまう…。 SFスリラー。... [続きを読む]
受信: 2014年10月10日 (金) 16時47分
» 猿の惑星:新世紀 ライジング Dawn of the Planet of the Apes 131分に渡りダレること皆無。満足度高し! [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
前作、猿の惑星:創世記(ジェネシス)を、当ブログは以下のように褒めている。
<「老い」とは
#8232;<「親子の絆」とは
#8232;<「人格」とは
#8232;<「愛情」とは
#8232;<「人権」とは#8232;
<「尊厳」とは#8232;#8232;
<な...... [続きを読む]
受信: 2014年10月12日 (日) 08時15分
» 猿の惑星:新世紀(ライジング)・・・・・評価額1750円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
“星を継ぐもの”は誰だ?
2011年に公開されたリブート版「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の、10年後の世界を描く新シリーズ第二弾、「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は驚くべき映画だ。
ルパート・ワイアットから監督を引き継いだマット・リーヴスは、絶滅に瀕した人類と進化した猿たちの予期せぬ出会いから始まる壮大な叙事詩を構築し、あっさりと前作を凌駕してみせた。
二つの種族10年ぶりの...... [続きを読む]
受信: 2014年10月13日 (月) 20時16分
» 猿の惑星 新世紀 ライジング(2D字幕)/DAWN OF THE PLANET OF THE APES [我想一個人映画美的女人blog]
2011年に公開された「猿の惑星」シリーズの前日譚、
「猿の惑星 創世記ジェネシス」の続編。
これまでのが全部好きなので先行にて鑑賞
前作から10年後の世界を舞台に、猿の英雄シーザーに率いられ独自の文明を築き始めた猿の集団と、
存亡の危機に陥った人類が...... [続きを読む]
受信: 2014年10月24日 (金) 22時49分
コメント