「リスボンに誘われて」:タイトルに誘われて
映画『リスボンに誘われて』は、都内ではBunkamuraル・シネマの単館公開であり、タイトルの印象からは異国情緒たっぷりの初老の男の枯れたラブストーリーって雰囲気で、実際そう思ってやってきた観客も多かったことと思いますが(小生もそうです)、実はポルトガル近代史の暗黒面を探る旅情ミステリーといった作品なのでした。まあ現代のパートに多少ラブロマンスめいた味付けはあるのですが、あくまでも後景程度に留めてあります。近代史ミステリーの部分にも恋愛がらみはありますけど、それも副次的な要素なんでねえ・・・。
そもそもジェレミー・アイアンズ演じる学校の先生がいきなり授業をほったらかしてリスボンに行ってしまい、そこで何日も過ごすなんて大胆な行動の理由が、観てる者として納得できるように描かれていないことが引っかかります。原作の小説はいざ知らず、少なくとも映画を観る限りでは、この異様な執着の理由が本だと言われても合点が行かないのです。
そして独裁政権とレジスタンスの暗闘が70年代の話と知ってびっくり! 少なくとも映像のルックはもっと昔の物語であるかのように思えました。
地味に見えて意外と豪勢なキャストです。ジェレミー・アイアンズを筆頭に、シャーロット・ランプリング、メラニー・ロラン、レナ・オリン、ブルーノ・ガンツ、クリストファー・リーなどなど。 やはりジェレミーは知的な役が似合いますね。でもリスボンに着いた時に買って着替えたブルー・ストライプのシャツを何日もずーっと着ていたのは、ちょっと匂いそうでした(ジャケットも着っぱなしでしたが、まあそちらは許せるとして・・・)
(以降ややネタバレあり) かなり控え目に描かれる「大人の恋愛」の部分は、ラストシーンで一応の展開を見せつつ余韻を残して・・・ってところなのですが、どうにも「取ってつけた感」は否めません。まあそこはそれ、こういった部分がないとあまりにも堅くて暗くて観客がいなくなっちゃいますから、良しとしましょう。
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