「世界一美しいボルドーの秘密」:モヤモヤと気が滅入って
映画『世界一美しいボルドーの秘密』は、ワイン好きのはしくれのはしくれとして、観ていて気の滅入(めい)る作品。しかしながらワインファンを含む多くの人々にこの現実を知ってもらって、考えるきっかけにすると言う意味では有意義な作品だと思います。視点のしっかりしたドキュメンタリーです。
気の滅入ると書いた理由は、中盤以降に延々出てくる本作のテーマであるところの「中国の過剰なワイン・フィーバー」があまりに凄まじく、しかも哀しいまでに成金趣味になっているためです。従来の価格体系をぶち壊すほどクレイジーな高額での大量買いとか、ラフィットとラトゥールだけがバカ人気で、それを飲んでる理由が「女性のお肌に良いから」だとか(そんな理由で飲める値段ではないですし、そもそもワインは美容ドリンクではない!)・・・。そんな話が続くので、情けないやら腹立たしいやらで、かなりモヤモヤとします。
話が偽造ワインにまで及ぶにつき、「やっぱりねえ」という感想以上に、もう泣きたくなります。ラフィットの空き瓶は500ドルで売れるとか、レストランで空き瓶を目の前で割ってもらわないと安心できないとか、まあひどい話の数々にあきれます。
最後に、中国のワイン・バブルも2011年ではじけて急降下と出てきて、少しほっとするのですが、はてさて。次にインドでワイン・フィーバーが起きないとは誰も言いきれないではないですか。ワインが「自然に左右される有限の産物」であることへの理解と、ワインというの文化への(歴史や背景を含めた)リスペクトが絶対的に必要です。ボルドーの皆様方には、そのための矜持と戦略をこれまで以上に期待いたしております。
それにしても中国のワイン関係者や愛好者(≒お金持ち)は皆さんことごとく英語を話すんですよね。十数人出てきたと思いますが、中国語で話してるのは二人だけでした。ここらが日本と違うワールドワイドな金儲けの基本なんでしょうねえ。
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