「天才スピヴェット」:見事な3D、至福の映像
映画『天才スピヴェット』は、「この映画が好きだあ!」と叫びたくなるような秀作。『アメリ』(01)以降の2作(『ロング・エンゲージメント』『ミックマック』)は再びあの高みに到達することのなかったジャン=ピエール・ジュネ監督ですが、ここでの才能の爆発は凄いものがあります。まさに「天才ジュネ」です。
3Dが見事に効果的かつ楽しい!のです。大江戸のベスト3D作品はマーティン・スコセッシの『ヒューゴの不思議な発明』ですが、本作はそれに次ぐものとなりました。これは絶対3Dで観なくっちゃです。 その他のギミック--吹き出し的な小さな映像の組み込ませ方/各章のタイトルを「飛び出す絵本」(まさに3D)で表現/アカデミックな解説図を画面にかぶせる--などなども楽しいんですよねー。
第1章「西部」でスピヴェットと変わった家族の紹介をテンポよく終えると、第2章「大陸横断」ではロードムービー的展開に。最高に笑えたのは列車に乗せられたキャンピングカーで書き割に扮するスピヴェットの場面! そういった笑いのセンスも随所で光っています。 そして沿線の美少女とのほんの一瞬の視線の交差・・・良かったなあ。一期一会。
T.S.スピヴェット少年を演じるカイル・キャトレット君がいやー、見事です。天才少年の孤独も子どもらしさも、不安もけなげさも、情感をたたえながら演じきっています。ヘレナ・ボナム=カーター、ジュディ・デイヴェスら周囲の人々を演じる役者たちも、当然のようにしっかり巧かったですしね。
ジュネの映像世界、その完璧にコントロールされたポップな箱庭世界はウェス・アンダーソンにも共通して、映画ならではの眼福を体験させてくれます。とにかく色がステキで気持ちいいんです。映像を見ることの幸せを味わせてくれます。「自然」も「人工」も等価に美しいのです。その上、ウェスの映画よりもピュアな「愛」(いつくしみ)があるのです。
それにしてもこの邦題『天才スピヴェット』って、意図してか期せずしてか「T.S.スピヴェット」と符合しているところがこれまたスゴイですね。 本年の小生のベスト1の有力候補であります。
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