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2014年11月29日 (土)

「紙の月」:本物の演出・本物の演技

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映画『紙の月』は、吉田大八監督に今、脂が乗っていることを示す高密度の作品。1カット1カットに込められたこの「力」は何なのでしょう。 確かに『桐島、部活やめるってよ』は、対抗馬がいなさ過ぎた年だったので『キネ旬』ベスト1に輝いた作品ではありましたが、それでも独自の個性と才能に彩られた良作ではありました。本作では、「堂々たる映画的演出力」においては、(変化球の)『桐島』を楽々越えています。

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やはりこういう映画を観てしまうと、クォリティーや志において物足りない「映画未満」の作品がいかに多いかってことに改めて気づかされます。 本作では、主人公の宮沢りえを見事に捉えた映像の冷えた質感や、(原作は未読ですが)過不足なく2時間ちょいの物語としてテンポ良く巧妙に紡いでいった脚本(早船歌江子)には、プロの仕事して非常に感心しました。

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銀行で働く二人の重要人物(小林聡美、大島優子)が映画オリジナルの人物と知って、びっくりしました。特に小林聡美の役は、彼女のおかげでこの作品が成立していると言っても過言ではない役であり、小林の演技も(いつも通り)見事でした。 もちろん宮沢りえも最高に見事な主演ぶりです。クールなポーカーフェイスの中に、様々な思いや心の揺らぎを詰め込んで、本作の中を駆け抜けます。今日びの41歳にしては老け過ぎ、やつれ過ぎに見えるのですが、役の上では目の下のクマや頬のあたりのげっそりした感じが効いているのです。

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(以降ややネタバレあり) 人間の不可思議をただ不可思議として提示した体温の低い作品。 ただ、ラストのあのエピソードだけは、蛇足でしたねえ。その前の「白へのフェィドアウト」で終わっていればよかったのに・・・。

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