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2014年12月 9日 (火)

「フューリー」:最前線の恐怖と虚しさ

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映画『フューリー』といえば、小生にとってはブライアン・デ・パルマ監督作品が思い浮かぶのですが(ジョン・カサヴェテスが良かったなあ)、このデイヴィッド・エアー監督作品はそれを越えましたね。今後は『フューリー』と言えば、これってなるんでしょうね。作品が堂々として、ある種の風格さえ備わっております。まあ、とはいえ『プライベート・ライアン』越えはできていないというのが、(スピルバーグ好きの)大江戸の見解でありますが・・・。

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ある種のビルドゥングスロマンにして、反戦映画でもあります。もっとも、中には好戦映画と捉える人もいたりするんでしょうねえ。大江戸は常々、「戦争自体が残酷にして狂気である以上、全ての戦争映画は反戦映画たり得る」と言っているのですが、まあその昔には「戦争=スポーツ映画」みたいなのもありましたからねえ。

でも本作は戦場の最前線における描写がひたすらリアルに恐ろしく、迫力ある銃撃描写+人体損壊描写もバリバリで、「やっぱりデイヴィッド・エアーって、そ349750_007ういうのが好きな人なんだ」と確信したのでありました。

(以降多少ネタバレあり) 観客のほとんどは若い新米兵士に感情移入するしかなく(その他はみんなケダモノですから)、であるからこそ彼もまた殺人マシーンへと変貌してしまうことに、ある種の戸惑いと不快感を覚えたりするのです。一方ではたくましく変貌していく彼に、ある種の感慨も抱くのではありますが・・・。 そして彼のメンターとしてのウォー・ダディ(ブラッド・ピット)、アメリカ映画の伝統を引き継ぐ頼もしくかっこいいキャラクターです。でも結局は残虐な殺人マシーンだというところが、本作の描く戦争の狂気です。

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しかしながら、銃撃の弾道がグリーンやピンクの光線で描写されていたのにはズッコケました。『スター・ウォーズ』じゃないんだから。

そしてクライマックスで、援護射撃に守られながら戦車を抜け出して補充用の弾薬を取って来るという場面があり、そこで思い出したのは『明日に向って撃て!』なのでした。

ラスト・シーンの真俯瞰+ズームアウトの死屍累々は、まさに戦争の悲惨さと虚しさを表現した印象的な映像でありました。そこにある虚しさは、『戦場にかける橋』や『遠すぎた橋』にも共通するものだという気がいたします。

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