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2014年12月12日 (金)

「メビウス」:極北の寓話

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映画『メビウス』は、韓国映画界の鬼っ子キム・ギドクの作品中でも最もスキャンダラスな問題作。世の中を挑発しまくってます。

その上なんと全編一切の台詞なし。字幕版製作費用がかからないので、配給元(武蔵野エンタテインメント)としては助かったことでしょう。サイレントではないので声は出ますが、うめき声や叫びなどに限られます。ただここまで徹底的にやると、さすがに少々不自然(会話の無いことが)な場面も無くは無いのですが、観終わるとそんなことも忘れてしまうくらい、作家が語りたいことは全て語っていると言う力技なのでありました。

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キム・ギドクと言えば「狂気の寓話(神話)」作家であり、「痛み」(肉体的痛覚)の作家であり、「贖罪」の作家ですが、本作もまさにその3点が最大限に表出しており、この作家の業の深さに胸が悪くなるほど圧倒されます。生理的にもとにかく「痛い」ので、観ていて緊張し、疲れます。

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その一方であまりにも過剰で(バカバカしくて)笑っちゃうような場面も結構あります。まあお話自体がどんどんファンタジーの領域に突っ走って行くから、当然と言えば当然ですし、観る角度によっては「コメディー」とすら言えるものだと思います。

まあ、それにしてもナイフを刺して・・・のくだりには顔をしかめながら、開いた口がふさがらない感じ。もう「ギャグとして笑うしかない」って感じです。極北ですね。

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どうでもいいけど、父親役の役者がASKA容疑者(+林修先生)に、息子役が羽生弓弦くんに、若い女の役が小保方晴子さんにちょっと似ているあたりも韓国の奇想と日本のリアルとのメビウスなのでした(って、小生もギドク=擬毒 に当てられて、何を言ってるのかわかりません)。

でもこの若い女と母親を一人二役で演じ切った女優さん(=イ・ウヌ)、良いですね。オーバー・アクトもセンシュアリティーも含めて、さすがはギドク映画のヒロインなのでした。

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