「ビッグ・アイズ」:有楽座のラスト・ショー

有楽町のTOHOシネマズ有楽座が2月27日で閉館になるということで、最後のロードショー作品『ビッグ・アイズ』を観て来ました。
ティム・バートン久々の「非ファンタジー映画」。久々も何も1994年の『エド・ウッド』以来20年ぶりです! とはいえ、デカ目の人々がスーパーマーケットに出現する場面、鏡を覗くと自分の顔がデカ目になっている場面、そして(特に序盤における)人工着色のお菓子みたいなブルーやピンクの乱舞は、いかにもティム・バートンの「ファンタジー」領域でしたけど。

このBIG EYESシリーズの絵画、ブライス人形などにも影響を与えたのだとか。なるほどなるほど。 独自のスタイルで貫かれた少女の絵で、目が印象的ということにおいて、小生が連想したのは我らが奈良美智の作品でした。

世紀の俗物亭主にして悪魔の搾取王を演じたクリストフ・ヴァルツはもう腹が立ってたまらない程のいやったらしい芝居でした。これってやはり巧いってことなんでしょうねえ。 対するエイミー・アダムスは役柄同様の一歩引いた芝居。でも過不足なく的確に、抑圧された心のペインを演じておりました。

どうして人々はこんな奴(ウォルター)に騙されちまったのか、見抜けなかったのか、ちょっと不思議です。少なくともこの映画では、彼の口八丁の軽薄さと中身のない金の亡者ぶりが、あの哀しい瞳の子どもたちの絵とはあまりにかけはなれて、相容れないように描写されていますので・・・。 それにしてもつくづくひどい奴として描かれているので、裁判シーンでのカタルシスには溜飲が下がります(って、大江戸も単純ですね)。 このウォルター、『シャイニング』のジャック・ニコルソンにまでなっちゃってましたからね(鍵穴の場面)。

マーガレットがスーパーマーケットで大量陳列されたキャンベルスープ缶を手に取ると、その横にBIG EYESの複製プロダクツがイベント展示されているってシーンは、言うまでもなくウォーホル的な「複製芸術」への目くばせとして、ニヤリとしたくなるシーンでした。

素晴らしい作品だったので、有楽座のラスト・ショーにふさわしいものとなり良かったです。小生にとっては「有楽座」はやはりあの日比谷の、日本一の劇場であり、ここはむしろ「ニュー東宝シネマ1」時代の記憶の方が染みついているのですが、まあ「有楽座」という由緒ある名前を継投したって感じで、将来またどこかに「有楽座」が復活してくれることを願ってやみません。 TOHOシネマズ有楽座としてオープンする際の改装で、ポストモダン的、あるいは擬古体的に凝りまくってくれた内装も、個性的なコヤとして好きだったんですけどねえ。縦に長い割にはスクリーンが小さいので、前の方の席を取ることを旨としておりました。昔はこのビルの地下にも映画館があって(ニュー東宝シネマ2)、『明日に向って撃て!』のリバイバルをそこで観てメチャメチャ感動したものです。
複数のスクリーンを持たない昔馴染みの個性的な映画館がまた一つ消えていくのは、身を切られるように辛いものですね。
(閉館のニュース・リリース ↓)
https://www.tohotheater.jp/news/yurakuza_final.html
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