「さよなら歌舞伎町」:ノッてる二人による原点帰りの良作
映画『さよなら歌舞伎町』は、ロマンポルノ出身である荒井晴彦(脚本=中野太と共同)とピンク出身の廣木隆一(監督)らしい題材で、らしい良作に仕上がりました。やはり出自を感じさせる匂いが出ていて、それが魅力となっています。そして何よりも人間が面白く愛おしく描かれています。荒井さんはここのところ『共喰い』、『海を感じる時』、そして本作と、ここに来てまた好調ですし、廣木さんは1月(本作)、2月(『娚の一生』)、3月(『ストロボ・エッジ』)と公開作が連続するという物凄さです! ノッてるベテラン・コンビが、原点帰りのいい仕事をしてくれました。
5組のカップルの一昼夜~朝に至る行動を、歌舞伎町(+新大久保のコリアン・タウン)を舞台に交錯させながら描いていった作品。歌舞伎町版の『ラブ・アクチュアリー』とか『バレンタインデー』とかそんな感じですね。どのカップルもじわじわと面白く、染谷将太くんは(いつものように)観察者としても機能しています。狂言回しであり、観客の視線の代理人でもあります。
染谷が店長(ラブホの場合、支配人じゃなくて店長なんすかね?)を務める「ホテル・アトラス」をメインの舞台にしながら、ドンキホーテやら花園神社やら職安通りの韓国食材店や料理店など、あの界隈のロケも多く、後世への映像資料としても価値ありの「ご当地映画」です。
全編、単純に人々を見つめることが面白い作品なのですが、東日本大震災への言及や関連付けがかなり多くて、そこはちょっと不自然かなと感じました。それと、偶然誰かと誰かが居合わせる場面が多過ぎるのもいかがなものか・・・。
登場人物が一人一人(ダメだけど)チャーミングなんですよねー。中でも忍成修吾のチンピラの心やさしさとか、韓国デリヘル嬢(イ・ウンウ)の性格の良さとかに心動かされるものがありました。このイ・ウンウさんって、あの『メビウス』で二役を演じた女優さんなんですって!なるほど、やはり伝わって来る情感のレベルが只者ではありませんでした。
エンドタイトル後の松重豊と南果歩の場面によって、本当に気分よく映画館を出られます。それにしても松重さんが飯食ってると、どうしても「これにして正解だ」とか「口の中でダンスを踊っている」とか聞こえて来そうな気がしてなりませんです(『孤独のグルメ』のインパクトは大きいですよねえ)。
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