「オリエント急行殺人事件」:三谷も萬斎も良い仕事!
昨日今日と2夜連続のフジテレビ『オリエント急行殺人事件』(三谷幸喜脚本)を見ました。1夜目はあの名作を日本を舞台に日本人バージョンとしながらも、原作に忠実にドラマ化。推理小説史上最も意外な犯人が判明したところまでを3時間枠で描きました。
野村萬斎の名探偵・勝呂が実にポアロで、いやー面白い。あのオーバーアクトとも言える大芝居を無理なく出来ちゃう人って、やっぱり萬斎さんしかいないです。体型はポアロじゃないけど、さすがのキャスティングです。独特の口跡がポアロであると同時に、古畑任三郎やコロンボや「笑ゥせぇるすまん」もちょこっと混ざっているようでしたが・・・。
全体的に(殺人事件なのに)そこはかとないユーモアが滲み出ているあたりが三谷節。それと時代を再現する衣装、美術などが素敵でした。特にオリエント急行が「東洋急行」になっているあたり、楽しいですねえ。
第2夜の今日は、三谷さんの本領発揮たるオリジナル部分。犯人サイドの視点から、犯行に至るまでの日々を描くという大胆な発想。 (以降ややネタバレあり)犯行までの5年間の描き方があたかも『忠臣蔵』ってのが、面白かったです。犯行を「かたき討ち」との位置づけで描き、実際に松島菜々子を「大石内蔵介」になぞらえる台詞もありました。
それと『12人の優しい日本人』の三谷幸喜が、『12人の怒れる男』好きの三谷幸喜が、大のミステリー・ファンの三谷幸喜が、この作品を手掛けるってのは必然でしたね。12という数に対するこだわり。そしてタイトルである『オリエント急行殺人事件』に“WHODUNIT(フーダニット)”という英語が添えられておりました。これは“Who has done it ?”の略で、「探偵小説」を示す古風な言い方。そこらにもいちいちニヤリです。
おかしかったのは乗客たちが名探偵・勝呂の噂をしている場面で出てきた「あの『いろは殺人事件』を解決したんですって」という台詞。アガサ・クリスティのポアロものの一つ『ABC殺人事件』を日本版に置き換えたネーミングってわけですね。最高です。
ラストの清々しさも、シドニー・ルメット版の映画のよう。これはやはり「ハッピー・エンド」ですからね。6時間近い旅ではありましたが、楽しませていただきました。
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