「さらば、愛の言葉よ」:生涯前衛のゴダール翁
映画『さらば、愛の言葉よ』は、ゴダールの3D。それだけでヘンだし、興味深くてたまらないわけですが、観てみると・・・想像以上にヘンでした。過激な実験作です。69分のトリップを終えて、たいていのひとは唖然呆然とするしかないでしょう。終映後の空気がそれを物語っていました。まあ、正直なところ「なんだこりゃ」としか言いようがありませんよね。
これまでのゴダール作品の中でも「最左翼」と言いましょうか、ブッとぶにも程があるって感じです。今84歳ですぜ、ゴダール翁は! 「生涯前衛」なのですね。草間彌生もビックリです。
家電屋で売っているような民生機のキャメラを何台も使って撮られた映像は、明るくキレイ。わざと粗い画調を楽しんでいるようなところもあるし、草花の鮮やかすぎる色などは、ほとんどサイケデリック・ドリームのようです。ウォーホルの、あの花の作品(Flowers)にも似ていて・・・。「3Dは画面が暗い」という従来の常識に対抗するかのようです。 で、3Dの用い方、絵作りはやはり斬新。これまで見たことの無い3D映像が次々と出てきて、視覚面で大いに刺激的でした。
最も注目すべきは2ヶ所出てくる「右目と左目に違うものを見せてくれる場面」。これってきっと「映画のキュビスム」ですよね。まあ、目と脳にはやさしくない映像でしたが、ゴダール翁はこんな実験までやらかしてくれてるのです。
’6-70年代に比べて、その後の映画からは「前衛」「難解」という言葉が失われてしまっているように思えますが、久々にこういう作品に巡り合うのも、なんだか新鮮で笑っちゃいます。頭の中は「???」だらけでしたけど。
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