「くちびるに歌を」:ベタであざといのに盛り上がらない
映画『くちびるに歌を』を試写会で観ました。三木孝浩監督にとっては、この半年で3本目(『ホット・ロード』『アオハライド』に次ぐ)の公開作となります。売れっ子ですね。しかーし、映画としては3本ともに残念な出来となりました。
なにしろベタ過ぎるほどベタ。ありきたりなストーリーと、ステレオタイプな登場人物。主人公の新垣結衣のみならず、教え子の女の子や男の子の物語も、まあありがちですね。それをメリハリのない演出で2時間12分も丁寧に見せてくれるものですから、とても「じれったい」感じでした。
小生はガッキーのファンなのですが、こんなに魅力のない新垣結衣も珍しい。つまり新垣さんは、その笑顔が魅力な人であり、笑顔がないと魅力が半減以下になるということは、『麒麟の翼』でも証明されておりました。しかるに本作ではガッキー・スマイルをほぼ封印しており(1時間半以上たってから、ほんの少しだけ出てきますけど)、それどころか全編の大部分を「性格の悪い女」として生きるので、ちょちょちょっと、こんな主人公アリなんですかね??と疑問を感じざるを得ないのであります。
そういえば三木孝浩監督は『ホット・ロード』でも能年玲奈の笑顔をかなり封印して魅力のない主人公(少なくとも小生にとっては、役者とのミスマッチが悲しかったです)を造形したばかりでしたね。うーん、困ったもんだ。
(以降ネタバレあり) クライマックスの合唱コンテストが意外なほど盛り上がらないのも、困ったものです。本編中のここに至る映像を曲に乗せて積み重ねるという古めかしいほどありがちな手法を使いながら、まったく盛り上がりや感動に至らないのが不思議でしょうがありませんでした。
そもそも木村文乃が「緊急出産することになった」という報せで、新垣も生徒たちもあそこまでショックを受けなくてもいいじゃないかってほど呆然としたり取り乱したりするのが不思議。まるで死んじゃったようで・・・(そりゃあ危険な状況ってのはわかりますけれど)。しかも、その割には電話で歌声を届けるって・・・、そんな状況じゃないのでは?!「物語のために無理矢理作った感」が引っ掛かりました。その後の、木村の結果を電話で知らせるくだりだって、同様に「いかにも」な感じですし。全体的に「あざといなあ」って作りなのです。
ラストにしても、主人公が人間的に成長したように感じられないのが辛いところ。むしろやっと島から脱出できてせいせいしているように見えてしまったのは、小生だけなのでありましょうか?
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