「インヒアレント・ヴァイス」:1970年のゆるゆるハードボイルド
映画『インヒアレント・ヴァイス』は、1970年のロサンゼルスを舞台にした私立探偵もの。そう、ロバート・アルトマンの『ロング・グッドバイ』の世界を、もっとグダグダにした感じ。探偵役がもみあげのでかいヒッピー風のホアキン・フェニックス。そこらでこの作品のトーンが決まっています。しかもポール・トーマス・アンダーソン(PTA)って監督は、昔からアルトマンっぽいテイストを持っていましたから。彼なりの『ロング・グッドバイ』を作りたかったのでしょうね、きっと。
ただハードボイルドの常として、話はよくわかりません。っていうか、途中で「まあ話はどうでもいいやね。どうせハードボイルドなんでしょ。」って感じになります。全体のムードと細部の味わいを楽しめば、それでいいって作品。PTA監督も、その「お約束」を前提にして作っている感じです。
かと言って、その雰囲気やディテールがそんなに面白いかというと、・・・そうでもないんですね。少なくとも小生にとっては。まあ、そもそも世間から絶賛されるPTAの作品とは相性悪くて、ほとんど面白いと思ったことないんで。
ヒッピーたちが集まるテーブルの図があたかも『最後の晩餐』のようになる短いシーンも、スティル写真で確認してみると、人数は多すぎる(13人じゃない)は、ポーズは違うはというゆるさ。そもそも何のため?と、いろいろ謎めいております。
ジョシュ・ブローリンはまたしても面白かったなあ。角刈り(フリントストーンの髪型と言ってたな)で、これぞ「ゴリガン男」っていう感じで。
ファースト・シーン=ラスト・シーンがキマッてます。2軒の家の間に、向こう側の海と浜辺が見えている絵。これが何とも見事に映画的な構図なんですよねー。そんなわけで、最初は期待したんですけど・・・。面白くなかったし、長かったですねー(2時間29分)。まあ、やはりPTAとは合わないんだなあと再確認しました。
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