「百日紅 Miss Hokusai 」:お江戸のパワーが足りなくて
『百日紅 Miss Hokusai 』は、葛飾北斎とその娘・お榮に材を取った杉浦日向子の原作マンガをアニメ映画化した作品。江戸時代のお江戸を舞台にしたアニメと来ては、大江戸としても期待するってもんです。
確かにオープニングの大川(隅田川)にかかる両国橋なんざぁ、素敵な長めでした。でもねえ、妙に町や景色がときめかないっていうか、風景の持つパワーが感じられないんです。
原恵一監督の作品でも『カラフル』で玉電の線路跡を辿っていった描写の方が、よっぽど生き生きしていたじゃありませんか。
ま、雪の場面とか夜の吉原とか、小舟に乗っていると「神奈川沖浪裏」の幻想がヴィジュアライズされるなんてあたりは、なかなかよろしかったのですけれどね。
妖怪の話もかなり多いのですが、その割には画面は終始明るいし「カラフル」なのです。まあ絵師の物語だから、多くの色を配したのは当然と言えば当然。ただ、この時代ならではの「暗闇」の表現には、もう少しチャレンジしてほしかった気もいたします。
ビジュアル的には海外に売れる作品だと思うのですが、いかんせんもっとストーリー的に1本幹が通って、通俗的にぐいぐいと面白くないと。これだと淡泊すぎて、一部マニアのための作品に留まってしまいそうで、残念です。
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