「サンドラの週末」:今回は甘口のダルデンヌ兄弟
映画『サンドラの週末』は、「辛く厳しい人生」がトレードマークと言えるダルデンヌ兄弟の新作。でも本作は、彼らにしてはかなり甘口。その分、好きになれる作品です。
シンプルな物語。ある種のロード・ムービーとも言えましょう。繰り返し繰り返し同僚の家を訪ね歩く週末の巡礼。このストレスは、健康な人でも相当心に負担が大きい行為だと思います。うつ病あがりの彼女にとっては、かなり危険。なぜ夫がたきつけて行かせるのか、ちょっと不思議です。実際、日曜日にあることがきっかけで絶望した彼女は、危険な領域に入り込むのですから。
そもそも「公営住宅に戻りたくない」が彼女の行動の理由なので、同僚たちの厳しい暮らしぶりを見るにつけ、あまり正当性が感じられなくなっていきます(夫の収入もありますしね)。
さらに、これがマリオン・コティヤールじゃなかったら・・・と考えると、果たしてこういう感じになったのでしょうかね? サンドラが暗くてブサイクな人だったり、汗っかきデブだったりしたら、みんなが味方になってボーナスをあきらめてくれたでしょうか? 本作のマリオンはスターのオーラを殺した素晴らしい演技なのですが、ふとそんなことが気になってしまいました。
(以降少々ネタバレあり) それでもラストには、ほんのりと希望の暖かさが漂います。サンドラが一段階強くなり、成長し、そしてその背後には彼女の味方についた仲間たちの優しさと勇気があったからなのです。ちょっとしょっぱいけど、悪くない後味です。
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コメント
こんにちは、ここなつと申します。
私も今回の作品は、ダルデンヌ兄弟にしては、ぬるいなぁ…と思いましたが…
まあ、たまには肩肘張らないこういう作品もよいのではないか、と。
意外にすっきりしたラストでした。
投稿: ここなつ | 2015年8月 4日 (火) 13時21分
ここなつさん、コメントありがとうございます。
まあ救いのない悲惨な作品よりもよっぽどいいですよね。お金払って、最後まで辛く悲しい人生を見せられて喜ぶほどMではありませんし・・・。
投稿: 大江戸時夫 | 2015年8月 4日 (火) 15時31分