「イマジン」:視覚以外の感覚を「見せる」作品
映画『イマジン』は、近年好調のポーランド映画界からの1本。視覚障害者たちの物語ですが、これほど「目が見えない」ことの何たるかを観客に伝える作品は、かつて無かったと思います。かなり難しい冒険に挑んで、見事に泳ぎ切っているのではないでしょうか。
主人公らが街を歩き回る際の、目が見えないゆえの身体感覚。聴覚、触覚、そして嗅覚さえもが映画から感じ取れるかのようです(コーヒーやブランデーの香り。海の匂い。風の匂い・・・)。 そしてサウンドデザインの繊細さは、言うまでもありません。
映画を観る我々も、主人公たちと一緒に足の裏で石畳を感じ、爪先で縁石を感じ、脇腹をかすめる街路灯を感じ、頬に触れる風を感じ・・・といった気持ちになっていきます。普段とは違う「感覚」の世界に誘ってくれる作品なのです。
(以降ネタバレあり) それにしてもラストで街の背景に突如現れる巨大な客船の風景には、実に映画的な興奮を覚えました。見えない目で見る奇跡を圧倒的なビジュアルで、映画的に昇華してくれました。 そういえば『フェリーニのアマルコルド』でも、豪華客船の出現場面で盲目のアコーディオン弾きが「どんなだ? どんなだ?」と訊ねていましたが、本作のアンジェイ・ヤキモフスキ監督も、そこらへんをちょっとは意識したんじゃないのかなあと思いました。
| 固定リンク
コメント