「ザ・トライブ」:殺伐として後味悪く・・・
映画『ザ・トライブ』は珍しやウクライナ映画。しかも登場人物全てが聾唖者なので(遠景で見える警察署の人々もガラス越しなので声は聞こえません)、全編物音(+多少のうめき声)だけという珍しさ。昨年のキム・ギドク監督『メビウス』も全編台詞無しでしたが、本作は「全編手話」というところが新機軸です。
登場人物たちの手話が、極めて激しい動きなのに驚かされます。早口(?)で卑語に満ちているだろうとと想像できる手話。手話で口ゲンカ(?)なんて、新鮮な驚きです。そもそも聾唖者の施設が上から下まで悪人&犯罪者だらけってあたりも、絶望的に新鮮なところです。
観ていてだいたいの話は理解できます。ただ、手話に関しては「今、何て言ったのだろう?」と隔靴掻痒なことも事実。ここらがこの映画の欠点ではあります。
しかし長回しの1シーン1カットを多用し、何とも冷え冷えとした臨場感を醸し出す本作の「文体」は、恐ろしくリアルに迫ります。あの堕胎のシーンの恐ろしさ、悲しさ、やるせなさ、不安、絶望などはあまりにも殺伐としていて、かなり気が滅入ります。
(以降ネタバレあり) そしてラストの衝撃! なるほどこう来ましたか。救いがなくて、嫌になりますね。ギャスパー・ノエの『アレックス』と並ぶ「頭つぶし映画」の誕生です。 いやー、実に後味の悪い映画です、間違ってもデート・ムービーに選んではいけません。
ところで、あのドアが無くて「床に穴」式の女子トイレって何なんですかね? 昔の中国は都会以外そういう形式だと聞いたことがありましたが、ウクライナもそうなんでしょうか? 謎です。
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