「あん」:樹木希林のネ申演技!
映画『あん』は河瀬直美監督作品なのに、原作ものであり、また社会性は十分に持ちながらも「普通の娯楽作品」として成立していることに嬉しいオドロキを感じました。ハンセン氏病を扱った地味な映画なのに、けっこう豪華なキャスティングです。そしてウェルメイドに感動させてくれて、作品の着地点もしっかりしているのです。
前半のどら焼きの餡をめぐる、「おいしいもの、ホンモノは、手間暇かかる」という職人物語に、中盤浅田美代子の登場以降暗い影が落ちていきます。一方で観客の心には差別や偏見への怒りが沸いてきます。単純で、教育映画みたいかも知れませんが、重いテーマを娯楽映画仕立てで多くの人に観てもらうことは、支持すべき戦略だと思います。
店長(永瀬正敏)と徳江(樹木希林)の間の魂のふれあいみたいな共振をしっかり描いて、観る者の胸に迫ります。社会性やテーマを声高に訴えるのではない姿勢が、かえって強いメッセージとして響くのです。
ドキュメンタリー・タッチの映像だとか、木々と光だとか、いかにも河瀬監督らしい特徴もありながら、ネオ河瀬的な「いい話」としての物語性にも挑んでおります。
とにかく樹木希林さんの演技が圧巻! 「神演技」と言いたいほどの只ならぬ素晴らしさです(「神芝居」ではありませんよ)。その表情に、発声に、動きに、慈愛が満ち満ちて、神々しいほどです。日本映画史上でも最高レベルの女優演技だと思います。
ワカナちゃん役の内田伽羅は、本木雅弘・内田也哉子夫妻の娘・・・ってことは、希林さんの孫娘なんですってね。びっくりです。
どら焼きを買って帰りました。
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コメント
川瀬じゃなくて河瀬です。
投稿: 佐藤秀 | 2015年6月19日 (金) 00時20分
今読み返して、ちょうど気づいたら、佐藤秀さんからもご指摘いただいておりました。 いや、お恥ずかしい。修正しました。 どうもありがとうございます。
投稿: 大江戸時夫 | 2015年6月19日 (金) 08時53分