「ラブ&ピース」:思いのエネルギー
映画『ラブ&ピース』は、5,6,7月封切りで『新宿スワン』、本作、『リアル鬼ごっこ』と続く「園子温まつり」の第2弾(今年は廣木隆一まつりの3連打もありましたね)。 園監督が25年前に書いたオリジナル脚本をほぼ当時のままに映画化したのだとか。そういう原点のパッションや思いの強さが感じられる作品になっておりました。ここで描かれたような鬱屈やコンプレックスから四半世紀たった今、メジャーなキャストとそれなりの予算で、こういう映画を作れる監督になったわけです。ワイルド・リョウに園監督がかぶるではありませんか。
なんか、小生が好きなものに彩られた作品でもありました。亀、ガメラ、タカラの人生ゲーム、コンサート会場、スタジアム、メガネの地味な女性、麻生久美子、RCサクセション・・・。 てなわけで、共感度大です。 これまでに多くの変な役を演じてきた麻生久美子にしても、ここまで地味な役は初めてでしょう。しかもこの流れだとどこかでメガネを取ると美しく輝いて・・・という少女マンガとか『ロッキー』のエイドリアンのパターンかと思いきや、最後まで地味を押し通しました。ラスト・カットの彼女の顔、いいですよねえ。
一方の長谷川博己は、今までの映画の中で一番良かったのではないでしょうか。コミカルに、そして過剰に、そして哀感たっぷりに、対人恐怖症的なダメ男とカリスマ・ロックスターの大きな振幅を演じ切ります。序盤に、みんなからいじめられている表情なんて、口元が左卜全(ひだり ぼくぜん--知らないか?)になっちゃってます。はいつくばってのカメ歩きも見事です。 ワイルド・リョウの歌やステージ・アクションも、無理なく様になっていました。ビジュアル的にも、ロックスターでイケてましたもん。
(以降ネタバレあり) 終盤で怪獣映画的になるあたり、浅草や新宿を舞台にした昭和的な特撮も嬉しいところ。ガメラ好きとしては、燃えます(『小さき勇者たち ガメラ』('06)みたいでもありますもんね)。
大江戸的には、下水道溝のファンタジー場面は、西田さんがいつもの西田敏行的な芝居で、違和感を感じました。玩具たちのファンタジー・パートは終始もたついた感があり、残念でした。
それにしても最後の方で流れるRCサクセション『スロー・バラード』は、ある評論家の方が『キネマ旬報』に書いていたように、ほとんど「反則」ですよね。どうしたって感動して、泣けてしまいますもん。でも、園さんとしても、若い時からの思いそのままに、好きなものや自分の核となるものを詰め込んでいったのでしょう。アラは多く、完成度は低くても、この「思い」のエネルギーに溢れた愛すべき作品だと感じました。
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