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2015年7月21日 (火)

「きみはいい子」:もっと寛容なゆるさを! 

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映画『きみはいい子』は、真摯な社会性に満ちた本年屈指の秀作です。呉美保監督作品としては、昨年の『そこのみにて光り輝く』よりも成長していると思います。

幼児虐待、学級崩壊、痴呆老人、などなど現在の日本が抱える問題を映画として見事に処理しながら、本質的なメッセージの強さを損なわない。しかも説教臭くもならなければ、娯楽に利用しただけにもならないという離れ業に成功しているのです。

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『そこのみにて光り輝く』に続いて呉監督と組んだ高田亮による脚本が見事です。原作の良さもあるのでしょうけれど、3つの物語をからませるようで実はからませずに描いて、しかも水面下でのつながりを感じさせる技の冴え。 「先生、先生になってよかったなって思うのはさ、大人になっても給食で揚げパン食べられることなんだよね。」なんて台詞は、原作にあるのでしょうか?それとも高田亮のオリジナルなのでしょうか?

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高良健吾、尾野真千子というメインの二人を支える役として、池脇千鶴、高橋和也の二人が効いています。考えてみればこの二人、『そこのみにて・・・』では全く違うタイプの役を演じていましたもんね。高橋なんか極悪人が極善人に変わってしまいました。 あと、おばあちゃん役の喜田道枝さんが、「こういう人いる」って感じに上品さと慈愛を湛えて、「いい人」の素晴らしい雰囲気を醸し出していました。 逆に「悪い人」の違和感やヤバさを感じさせてくれたのは、児童を虐待する継父役の松嶋亮太。こちらも嫌悪感溢れる(褒め言葉)好演でした。

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現代日本が抱える問題の多くは、人間のコミュニケーションに関するもの。そして、一人一人が他人の気持ちにもうちょっと寄り添ってあげられれば、他人にもう少し寛容になってあげられれば、ほとんどは解決する問題だと思うのです。人間(特に子供)は間違いを犯すもの、完全ではないもの、という前提で物事を考えれば、そして子供は親だけが育てるものではなく、地域や社会全体が育てていくという考えを持てば、世の中って随分と素敵なものになると思うのですけどね。子供にとっても、親にとっても、それ以外の人にとっても。 逆に言えば、「あそび」や「ゆるさ」のない不寛容な息苦しさが、全てを窮屈にしてしまうのです。

「ギュッと抱きしめることの効用」、確かにありそうです。

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コメント

お早うございます。
「先生、先生になってよかったなって思うのはさ、大人になっても給食で揚げパン食べられることなんだよね」という台詞は、原作(ポプラ文庫本)の43ページでは、「先生、先生になってよかったなと思うのは、大人になっても給食の揚げパンが食べられることなんだ」と記載されています。

投稿: クマネズミ | 2015年7月24日 (金) 07時30分

クマネズミさん、そうなんですか!
セリフとして発音した時に自然なように、微妙な変更を加えているのでしょうね。
うちの学校のは、きなこあげパンでした。当然大好きでした。

投稿: 大江戸時夫 | 2015年7月24日 (金) 13時16分

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