「グローリー 明日への行進」:多くの人に観てほしい!
映画『グローリー 明日への行進』は、魂の力が込められたマーティン・ルーサー・キング伝。といっても生涯の中の一部分だけを取り出した作りになっております。いずれにせよ本作が史上初の「キング牧師が主人公の映画」っていうのはオドロキです。まあ確かに観たことありませんでしたもんね。 ラストの字幕でびっくりしたのですが、キング牧師って享年39歳だったのですね! っていうことは、本作で描かれたのは36歳位の頃。わー、改めて凄い人物だったのですねー。
序盤から南部のひどい人種差別を具体的に見せられて、我々の胸にも憤怒の炎が点火します。しかもそれはFBIまで使って汚い工作を進めるリンドン・ジョンソン大統領にまで及ぶ話なのですから(ジョンソンはその後、政権維持のため態度軟化)、「敵の大きさ」には文句なしなのです。その大きな敵に挑むキングは、人並みに悩む人並みの男として描かれているので、ますます私たちも同化、共感するのです。
「交渉と非暴力」を活動の柱とするキングは、大統領との交渉でも一歩も引かず、言葉と意志の力を武器に、大統領から妥協や好条件、最後には勝利を引き出します。心の強い人です。それでも敵のみならず、味方からも非難されたりします。リーダーはつらいよ、先駆者はつらいよ、ですね。
黒人たちの行進に助太刀した白人牧師が闇討ちされ殺される場面にも、観る者の正義の血が沸騰します。黒人差別問題に限らず、今日の権利を勝ち取るまでには、多くの犠牲があったという歴史を、ともすれば人は忘れてしまいます。それを忘れてはならないことを再確認させてくれる映画でもあります。
これが1965年の出来事、50年前の出来事だなんて信じられませんね。だって、これから10年もたてば、いや5年もたてば(’70年代になれば)、我々の知っている限り、状況は全く違っているように思えるのですが・・・。世界はゆっくりと変わっていきますが、変わる時は一気に変わるというのも、また真実なのでしょうね。
小規模に公開されて地味に終わってしまいそうな本作ですが、できるだけ多くの人に観てもらいたい秀作だと思います。
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